見守り事業をビジネスに 高齢者が安心して暮らせるため
2018年09月26日物流weekly
全国各地に一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦のみの所帯が増加するなか、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための孤立防止と生活支援として、見守り事業が各地域の自治体で広がっている。民間では、新聞、郵便、牛乳の配達や宅配、コンビニエンスストア、一般廃棄物収集などが事業を展開。見守り支援などの効果は得られているものの、民間事業者では、収益性や地域固有のニーズへの対応が事業継続への課題となっている。
「利益はあえて追求せず、孤立防止と生活支援が優先」との考えで、高齢者ビジネスを展開しているシニアライフクリエイト(高橋洋社長、東京都港区)は、1999年に創業。同社は、高齢者専門宅配弁当「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」のフランチャイズ本部の運営や、高齢者施設向け食材卸事業「特助くん」の運営などの事業を行っている。
宅配クック ワン・ツゥ・スリー第一事業部の綿引啓人氏は「弁当を届けることで、高齢者の安否確認をすることができる」とし、「当社は見守りという部分を優先に考えているため、あえて利益を追求していない」という。宅配クック ワン・ツゥ・スリーは、全国に約340店舗構えており、それぞれの店舗環境に合わせて、1店舗に1人から多いところで30人の宅配スタッフを抱えている。
たとえ利益を追求しなくても、最低限の収益を得ることができなければ、事業としては成り立たない。高齢者へのサービスをビジネスとして確立するためには、高齢者が生活する上で必要な「需要」を見極めることが重要となる。
生活支援サービス事業を全国チェーン展開しているベンリーコーポレーション(前田満定社長、愛知県清須市)は、クリーニングや庭の手入れ、片付け、防災・防犯など100種類を超えるサービスラインナップで利用者の生活支援ニーズに応えている。
営業本部開発部長の上井博史氏は「高齢者サービスの需要が拡大するのと同時に、利用者のニーズも多様化している」とし、「必要とされるサービスを提供することで、高齢者が安心して暮らし続けることができる」と指摘。同社のサービスに対して、高齢者からの依頼は年々増加している。上井氏は「当社はフランチャイズによるチェーン展開を行っている。フランチャイジーには、運送事業者や建設業者などもいる」と続ける。
このほか、「地方の町おこしを兼ねて、高齢者へのサービスをビジネスに」としているアイル(池ヶ谷あかね社長、静岡市)では、同社が開発した「高齢者向けお買い物支援アプリ」の利用を提案している。同アプリ「マルカイ」は、地域のスーパーやドラッグストア、商店街などと連携し、アプリに好きな商品を登録することで、独自のお買い物サービス環境が完成するというもの。
タブレットで注文、配送することにより簡略化することができ、検品や配布支援、請求書発行などの便利機能も搭載。独自にシステムの構築やネットスーパーの登録をしなくても済むので、手軽に宅配サービスを始めることができる。セールスエンジニアの仁藤聖氏は「運送事業者が『マルカイ』を使って、地方のスーパーマーケットや商店街と提携し、このアプリからの注文商品の宅配を請け負っていただけるような展開を期待している」という。
高齢者へのサービス需要は今後、伸び続けると考えられるが、この大きな需要をビジネスとするには、最初から利益追求で臨むよりも、ニーズを的確に読み取って対応していくことがポイントなのかもしれない。