全国の孤独死の3分の1は東京23区で起きている
2018年09月26日Newsweek日本語版
アパート暮らしの単身の高齢者が増えているが、家主にとって怖いのが「孤独死」だ。入居している高齢者が孤独死した際、特殊清掃や遺品整理などの費用が下りる家主向けの保険が増えている。超高齢社会を迎え、家族の絆が希薄化している現状で、需要が増大しているのだろう。
このように社会問題になっている孤独死だが、数で言うとどのくらい発生しているのか。正確な統計はないが、厚労省の死因統計から近似値(相似値)を知ることはできる。「立会人のいない死亡」というカテゴリーの死亡者数だ。死亡時に立会人がおらず、死因が特定できなかったケースを指している。
2017年は2480人で、性別で見ると男性が1939人、女性が541人となっている。8割近くが男性だが、人付き合いをあまりしない人が男性では多いためだろう。時系列の推移も見てみた。今世紀以降の推移を整理したものだ。地域別の数値も分かるので、都市部の東京23区の推移データも拾ってみた。
立会人のいない死亡者は増加している。全国をみると1999年では665人だったが、2017年では上述のように2480人だ。この18年間で孤独死は4倍近くに増えている。都内23区では増加はより顕著で、10倍に膨れ上がっている(85人→862人)。
表の右端の数値によると、日本全国の孤独死の3分の1は都内23区で起きていることが分かる(2017年)。都内23区の人口比は7.6%でしかないことを考えると、極端な偏りだ。人間関係が希薄な大都市で孤独死は起きやすいのだろう。最近ではその傾向が強まっている。地方から上京してきた(身寄りのない)団塊世代が高齢期に達したことも背景にあるのではないか。
ちなみに大都市の中で見ると、孤独死には地域性がある。東京都監察医務院の資料から、都内23区別の孤独死者数がわかる。死因が不明の死者のうち、自宅で亡くなった単身者だ。これを各区の人口で割れば、孤独死の発生率になる。2015~17年の3年間の平均値を計算し、地図に落とすと<図1>のようになる。
同じ大都市の特別区だが、最高の台東区(76.9)と最低の中央区(32.2)では倍以上の開きがある。50を超える区には色をつけたが、孤独死の多発地帯は北部や北東部に固まっている。台東区、豊島区、北区、葛飾区では60を超える。
23区の孤独死率と住民の平均所得はマイナスの相関関係にあり、貧困と孤独死の関連がうかがわれる。しかしむしろ、経済的貧困より人間関係の希薄さ、「関係の貧困」の影響が大きいのではないか。
「関係の貧困」の状態にある高齢者は、時代とともに増えている。家族の絆が乏しい未婚の高齢者は、2000年では58万人だったが、2015年では155万人になり、2040年には255万人に達すると予測される(国立社会保障・人口問題研究所)。
こういう人たちの「つながり」を創出する実践が求められている。大阪のマンションで空き部屋を使って高齢住民の食堂を作ったところ、彼らの集いの場として機能しているという(9月23日、毎日新聞)。調理を担当するのは障害者で、障害者が働く場にもなっている。
空き家や廃校を活用し、こうした「交流センター」を設けるのもいいだろう。
また、これから高齢者になるのはITにある程度親しんだデジタル世代なので、それを介した安否確認のシステムを張り巡らせるのもいい。今や、中年層でもスマホの所有率が95%を超えるので、スマホを活用すれば難しいことではないはずだ。
人間にとって、他者とのつながりは欠かせないが、成り行きまかせではなく、意図的に生み出さないといけなくなっている。地域行事への参加を呼び掛けるような、伝統的なやり方では限界があるだろう。現在と未来の社会状況に即した戦略を取る必要がある。アメリカやイギリスなど他の先進国では、ICT(情報通信技術)を使った「つながり」の創出が、日本より進んでいる(総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」2018年)。