小さく安価なセンサーで一人暮らし高齢者を“大きく見守り” 大阪府住宅供給公社が堺で実証実験

2018年08月22日産経新聞


 振動を感知するセンサーを冷蔵庫やトイレの扉などに貼り付け、開け閉めを通知することで、遠方の親族が一人暮らしの高齢者を“見守る”ことができるサービスの実証実験を、大阪府住宅供給公社(大阪市)が始める。担当者は「公社の賃貸住宅には、長く住んでいただいている入居者の方も多く、さまざまな方法で安否確認などを行っていきたい」としている。

低コストで気軽に

 見守りサービスは、ITベンチャー企業「VALUECARE(ヴァリューケア」=東京都中野区=が開発した振動センサーと、京セラコミュニケーションシステム(京都市伏見区)が国内展開しているIoT(モノとインターネット)のネットワーク「Sigfox(シグフォックス)」を使う。実験は今月下旬から、槇塚台団地(堺市南区)で、10人程度の単身高齢者を対象に行う。

 65歳以上の単身高齢者が対象で、例えば冷蔵庫の扉にセンサーをつけ、開閉するとその通知がシグフォックスのネットワークを使って、あらかじめ登録してある親族に届く。逆に、開閉が24時間ないときにも通知が届き、「何か異変があった可能性があることが親族に伝わる」(公社)。

 シグフォックスを利用するポイントは、低コストでサービスを展開できることだという。

 公社の担当者によると、シグフォックスは、LPWA(低消費電力・長距離通信)の規格の一つで、Wi-Fiなどのインターネット環境がなくても機器をインターネットにつなげられる。低コストでインフラが整備でき、今回のサービスでも、小さなセンサーと5年間の通信料込みで9800円(税別)。月額にすると、利用者の負担は163円になる計算だ。

心理的負担を軽減

 “大がかり”な見守りサービスでないところが、逆に高齢者や見守る親族にとって、心理的な負担が少ない一面もあるという。

 「高齢の入居者にとっては、24時間監視されているような見守りサービスは歓迎されない。見守る親族の側も、気楽に通知を受け取ることができる」と公社の担当者。

 建設から年数がたった公営の賃貸住宅などにとって、入居者の高齢化は大きな課題となっている。府住宅供給公社の賃貸住宅も例外ではない。

 同公社によると、公社の賃貸住宅1万8728世帯のうち、単身の高齢者世帯の数(今年6月末時点)をみると、65歳以上が2761世帯と、全体の14・7%を占める。この値は大阪府の13・3%、全国の11・1%(いずれも平成27年10月時点)より大きく、しかも5年前より増えているという。

社員が定期的訪問

 同公社は、ほかにも高齢者向けの支援サービスを始めている。その一つが、今年4月から希望者に対して行っている「ふれあい訪問」サービスだ。

 長期間賃貸住宅に住んでいる入居者については、入居時に緊急連絡先を聞いていても、連絡先が変わってしまい、分からなくなっている場合もあるという。

 そこで、70歳以上の単身高齢者が希望した場合、同公社の社員が定期的に自宅を訪問。鍵の預け先や親族への連絡先、介護サービスの利用の有無などをあらかじめ把握し、日常生活の中での困りごとの相談なども受け付けるという。

 同公社の担当者は「入居者の方が亡くなる『孤独死』を防ぐことはもちろん、入居者の方の不安を減らし、住み慣れた地域でこれからも安心して暮らし続けることができるようにしていきたい」としている。