つえにIoT、高齢者見守り 富士通九州など装置 転倒時、家族らに通知
2018年07月18日日経新聞
富士通子会社の富士通九州システムズ(福岡市)とオートバックスセブンは、つえの持ち手に装着し、高齢者が転倒した時や徘徊(はいかい)している時に家族などに知らせるセンサーを試作した。ソニーの開発したセンサーを利用し、低電力で100キロ以上の距離に情報を送信できるのが特徴。2019年7月にもオートバックスセブンの店舗などで販売を始める。
試作したのは足腰の弱った高齢者が利用するつえに装着する装置。あらゆるものがネットにつながる「IoT」の技術で、転倒による骨折で動けなくなったり、認知症で徘徊したりしている高齢者の情報を素早く家族らに伝える。
装置は軽量化に向けて改良中で、最終的に300グラム以下を目指す。つえの持ち手のすぐ下に装着。装置には加速度を測るセンサーや、位置情報の検知センサーなどを組み込んだ。情報はソニーの開発した発信器で伝える。「LPWA」と呼ばれる低電力の無線規格の発信器で、100キロ以上の距離に情報を送ることができる。
価格は装置購入の初期費用が1万円程度、月額利用料は500円程度になる予定。全国のオートバックス店舗や、通販サイト「オートバックスドットコム」などを通じて販売することを検討しており、初年度は2千個を目指すという。
富士通九州などはつえに実際に装置をつけて倒す実証実験を行った。100キロ以上離れた場所でもつえが倒れた情報や、つえの正確な位置情報を受け取ることができるのを確認した。
誤ってつえが倒れた際に情報が伝達されないよう、緊急通知のボタンを取り付けることなども検討する。また、オートバックスセブンの管理するネットワーク上に情報を送信した後、家族のスマートフォンや健康見守りサービスの事業者などに通知するシステムの開発も並行して進めている。
富士通九州は17年、本社ビル内にIoTなどのデジタルサービスや装置を開発するための「Qube(キューブ)」を開設。部屋には様々なセンサーや3Dプリンターなどを設置し、機器の試作までを一つの部屋で行うことができる。こうした施設を活用し、他の企業と連携したIoT製品の開発に力を入れている。