本格化する「多死」 独居増加、家族関係希薄…自治体が終活支援

2018年04月13日SankeiBiz

  
 高齢者が亡くなった後、納骨など人生の締めくくりを自治体が手助けする“終活”支援事業が広がってきた。1人暮らしの高齢者が増え、家族関係が希薄になり、最期を誰にも託せない人が増えているためだ。団塊の世代の高齢化に伴う本格的な「多死社会」を前に、行政が動かざるを得ない事情もある。

 ◆安否確認まで

 「自分の最期のことはできるだけ自分で準備しておきたい」
 今年2月、神奈川県大和市の60代後半の男性が、同市担当者の立ち会いの下、納骨する寺や葬儀の内容を決めておく生前契約を事業者と結んだ。

 介護施設で暮らす男性は独身。きょうだいも高齢のため、自分に何かあっても後のことを頼むことはできない。「将来、周囲に迷惑をかけたくない」と申し込んだ。

 大和市は平成28年度から「葬儀生前契約支援事業」を始めている。主に、身寄りがなく、経済的に困窮している人が対象だ。契約の上限額は生活保護の葬祭扶助基準と同じ20万6千円。市の連絡先と葬祭事業者などを記載した登録カードをつくり、スムーズに連絡が取れるようにした。市による定期的な安否確認も受けられる。

 身寄りがあり一定以上の収入がある人にも、事業者や司法書士会、行政書士会の紹介などの情報提供をする。

 ◆本人の希望かなえて

 千葉市も今年1月から市民向けの終活セミナーや相談事業を始めた。葬祭事業を手掛けるイオンライフ(千葉市)と協定を結び、あんしんケアセンター(地域包括支援センター)が窓口になって相談を受け付ける。病院や施設入所の際の身元保証、遺言信託、生前整理などの契約も可能だ。

 担当者は「介護現場からは『亡くなるまでのケアはできても、その後は何もできない。本人の希望をかなえてあげたい』といった声が上がっていた」と事業開始の経緯を語る。

 ◆引き取り手なく

 独居高齢者の増加に加え、家族や親族がいても、「頼れない」「頼りたくない」人も目立つ。神奈川県横須賀市が27年度から、納骨先などを決めておく「エンディングプラン・サポート事業」を始めたのは、公費で火葬した後に引き取り手のない遺骨が急増したことがきっかけだった。

 同市福祉部の北見万幸次長は「親族がいても断られる例が多い。生活が苦しくても十数万円程度の蓄えがある人もおり、生前に契約していれば本人の希望をかなえられる」と話す。夫に先立たれた妻が「納骨堂で隣同士に」と希望し、実現したケースもあるという。

 自治体の動きについて、終活支援に詳しい第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員は「費用が出せないなどの理由で、利用者は多くないかもしれないが、事業を知っておくだけでも安心につながる」とみる。その上で、「日本の福祉は亡くなるところで終わっているが、納骨までの公的支援を検討すべき時ではないか」と提案した。

                   

 ■終末期の事前指示66%賛成

 厚生労働省は、一般国民を対象に実施した終末期医療に関する意識調査の結果を公表している。終末期の治療方針について自分が意思決定できなくなった場合に備え、どんな治療を受けたいか、受けたくないかを記した「事前指示書」の作成には66.0%の人が賛成した。このうち実際に指示書を作成済みの人は8.1%で、平成25年の前回調査から増えたものの、少数にとどまった。前回は指示書作成に賛成が69.7%、うち作成済みは3.2%だった。

 調査は5年ごとに実施しており、今回で6回目。昨年12月、全国の男女6000人に尋ね、973人が回答した。

 自分の終末期医療を話し合ったことがある人は39.5%で、前回の42.2%からほぼ横ばい。人生の最期を迎える場所を決めるのに考慮する点を複数回答で聞くと、「家族らの負担にならないこと」が73.3%で最多。「体や心の苦痛なく過ごせること」(57.1%)、「経済的負担が少ないこと」(55.2%)が続いた。