優しく見守る社会に 藤沢在住のシニア起業家がカメラ開発、事業化へ
2018年03月20日神奈川新聞
普段はそっと見守り、必要なときに必要な画像だけ写すカメラを藤沢市在住のシニア起業家が開発した。高齢者の安否確認や徘徊(はいかい)防止、プライバシーに配慮した監視カメラといった分野での活用を想定。「ストレスのない見守り社会に貢献したい」と、起業から3年目でいよいよビジネス展開をスタートさせる。
新たなカメラを開発したのは、SEtech代表取締役の関根弘一さん (66)。東芝で35年間、デジタルカメラやプリンターに欠かせないイメージセンサーの研究開発に携わった。「当時のお客は企業。エンドユーザーの声は聞こえていなかった」と振り返る。
定年後にコンサルタントとして訪れた介護施設で、監視カメラの画像がモニターにいくつも表示されている現場を目の当たりにし、「ずっと見続けるのは大変。見落としかねない」。プライバシーも配慮されておらず「見る側、見られる側ともストレス」と感じた。
「東芝での経験を生かレエンドユーザーの声を反映した開発をしよう」と2015年、1人で創業。以来、市内の起業家支援施設を拠点に動きを感知したときだけ画像を表示したり、撮影したりする監視カメラの開発に取り組んできた。
従来の人感センサーカメラとは異なり、監視するエリアを192分割して選択した特定領域の動きにだけ反応するのが特長だ。静止画を消去するという意味の英語の頭文字をとって「SEカメラ」と名付けた。
例えば、独り暮らしの高齢者宅の室内で生活の様子は写さず、ドアを開けたときだけ撮影、夜間はベッドから足を下ろしたときだけモニターに表示といった使用が可能。街中の工事現場などでは立ち入り禁止区域だけを監視対象にして隣接する住宅の敷地内は写さない、という使い方もできる。
関根さんは昨年2月、県主催の「第1回かながわシニア起業家ビジネスグランプリ2017」で最優秀の県知事賞を受賞。ことしはSEカメラの事業化に加え、技術を医療分野に応用レ大学病院で臨床データ取得にも着手する。「将来は健康の見守りサービスにもつなげたい」と話している。