着用センサーに伝統産業の技 医療、スポーツ分野に応用

2018年03月15日京都新聞

  
 京刺繍(ししゅう)や西陣織の技術を活用したウエアラブル(着用できる)センサーが、相次いで登場している。体の動きや心臓の電気的な活動を検知する機能を持たせ、高齢者の見守りやスポーツ、救急医療などの幅広い分野で応用を見込む。京都で培われた伝統的な技やデザインが、テクノロジーの新たな展開を後押ししている。

 京友禅の技術を生かしたジーンズ「京都デニム」の製造販売を手掛ける豊明(京都市下京区)は9日、関西大と帝人フロンティア(大阪市)が共同開発したセンシング技術「圧電刺繍(ししゅう)」を使ったブラウスとジーンズの試作品を発表した。

 引っ張ると電気が発生する圧電体を仕込んだ組紐(くみひも)を使い、衣服に12カ所のステッチ(縫い目)を施した。着用した人が手足を曲げたり、伸ばしたりするとステッチで電流が発生。スマートフォンなどで衣服から発生する電気信号を検知し、体の動きを解析する仕組みだ。京刺繍の技術を活用したステッチに加え、型染めや金彩をあしらったファッション性も特徴にしている。

 関西大の田實佳郎教授(センサー工学)は「従来のウエアラブルセンサーと違い、人体に密着させる必要がないので簡単に着られる。高齢者やペットの見守りに応用できる」と話す。サッカーシューズの外側に刺繍を施せば、ボールの当たった場所が分かるなど、スポーツでも応用が期待されているという。

 田實教授は、京くみひもの伝統工芸士と協力し、引っ張るとカメラのシャッターが切れる帯締めも開発した。田實教授は「京都の技がなければ、できなかった」と話す。
 一方、西陣織の技術を生かし、京都大医学部付属病院の黒田知宏教授と織物を手掛ける三匠工房(北区)、帝人フロンティアが開発したのが、救急車の中で心電図が簡単に計測できる電極布「テクノセンサーER」だ。
 緊急措置を要する急性虚血性心疾患などで患者の救命率を上げるためには、救急搬送の前に精密な心電図を計測することが重要。だが、従来の心電計は10個の電極を正しい位置に取り付けるのが困難だった。黒田教授は実家が西陣の織屋だったことから、「導電性繊維と西陣織を組み合わせれば解決できる」と考えついた。

 三匠工房の平野喜久夫代表(78)ら伝統工芸士3人が、力織機で織り上げる技術を約10年がかりで開発。どんな体形の患者でも横になったまま装着できるよう、15カ所に電極を設けたウエアラブル電極布を作り上げた。

 帝人フロンティアが、心電計測デバイスとして年内に発売する予定だ。黒田教授は「糸一本一本を制御できる西陣の技術を使えば、今後どんな複雑な電気回路布でも製造できる」と述べ、平野代表は「西陣の活性化につながればうれしい」と期待している。