見守り活動 大きな味方 60インチ デジタルマップ/石川
2018年03月04日中日新聞
石川県内灘町鶴ケ丘四の老人クラブ「鶴親(かくしん)会」が、高齢者らの見守り活動のため、60インチの大型タッチパネルを用いたデジタルマップを使う取り組みを続けている。北陸先端科学技術大学院大(同県能美市)などの研究グループが開発したシステムを使う。紙と比べて、情報を更新したり、より多くの内容を盛り込めるため、活動の幅を広げられるという。(中平雄大)
「ご主人が亡くなり、奥さん一人になったよ」「あの家のおじいさんは息子さん宅に移ったって」。鶴ケ丘西公民館に集まった会員たちがデジタルマップを見ながら、情報を寄せ合い、次々と入力していく。
この地区で暮らす約二千人のうち約三割が六十五歳以上。約百三十人が参加する鶴親会は四年前から、独り暮らしや家族と同居、空き家などと色分けした紙の住宅地図を作製し、声掛けや訪問などの安否確認に役立ててきた。
活動を知った先端大の池田満教授(55)らがデジタルマップを開発して提供した。紙の地図は情報を書き込みすぎると見づらくなるが、デジタルマップは家の部分をクリックすれば、多くの情報を表示できる。二〇一六年六月から使い始め、徐々にマップの内容が充実してきた。
情報の更新が容易なだけでなく、過去の情報も簡単に呼び出せる。家族の命日に自宅を訪問するような活動もやりやすくなる。だが、人が亡くなった情報などに関しては、「遺族が決めること」「主目的は見守りだから必要ない」という意見もある。
鶴親会の田中正敏会長(74)は「情報をどこまで共有して活動していくか、皆で十分に協議したい」と話す。また、インターネットを通じて各自がスマートフォンなどで閲覧できれば便利だが、情報が漏れる可能性があるため、使用は公民館のタッチパネルに限定している。
鶴親会が順調に活動を続ければ、デジタルマップが他の地域に広がる可能性もあるが、池田教授は「鶴親会は『紙』という活動の下地があり、リーダーシップを取れる人がいたからうまくいっている。他地域に広げるには地域リーダーの育成も必要になるでしょう」と話している。