電柱にセンサー、認知症見守り実験 加藤電機と中部電

2018年02月16日日経新聞

  
 自動車用セキュリティー機器を開発する加藤電機(愛知県半田市)は、中部電力と共同で、認知症で徘徊(はいかい)する高齢者の見守りサービスの実証実験を始める。2018年内に、名古屋市の電柱にセンサーを設け、モニターの高齢者に発信器を渡し、効果を探る。認知症の高齢者が行方不明となる例が社会問題となっており、実用化を急ぐ。

 「けがはしてない?大丈夫?」。2月6日午後2時、半田市の牧場内の細道で、片手にごみ袋を持って歩く女性(74)にボランティア3人が声をかけた。

 ボランティアが持つレーダー装置は、女性のカーディガンに仕込まれた発信器に強く反応を示していた。この女性は認知症で約10時間もさまよい自宅から2キロ先で発見された。発見に役立ったのが、加藤電機が開発した発信器「SAN(サン)フラワー」だ。

 加藤電機は10年かけて研究し、発信器を作り上げた。発信器は15秒につき1回、電波を出す。電波は店などに設けたセンサーの中継器が受信する。中継器が携帯電話の通信網でクラウド上に電波を飛ばし、専用サイトなどを介して発信器の位置が分かる。

 省電力の920メガ(メガは100万)ヘルツ帯の周波数を利用し、1回2時間の充電で45日間使える。位置情報の誤差50センチで非常に精度が高い。一般的に、位置情報を得るために使う全地球測位システム(GPS)は電池の消耗が激しく、誤差も10メートルあり、特定のモノや人を見つけるのには適さなかった。

 加藤電機は1月、中部電力のベンチャー選考会で最優秀賞を受賞した。両社は事業化を目指し、年内にも実証実験を始めるため、名古屋市で候補地を選ぶ。対象地域の電柱に中継器を設置し、参加者を募集する。加藤電機によると、9000本の電柱に設置できれば、愛知県の全域をカバーできるという。

 すでに半田市は17年2月から、加藤電機と共同で高齢者の見守り事業を始めている。店舗などに中継器100個を設置し、行方不明者の発見につなげている。

 内閣府は、65歳以上の高齢者のうち、認知症患者は25年に2割になると試算する。警察庁によると、16年に全国の警察に届け出があった認知症が原因の行方不明者は前年比26%増の約1万5400人に達した。事故や犯罪につながる可能性もあり、発信器は抑止効果も見込める。

 加藤学社長は海外の人気SFドラマ「スタートレック」のバッチ型の通信装置に着想を得て、多数の行方不明者を生んだ阪神大震災をきっかけに開発を進めた。「社会問題の解決の一助になれば」と期待を込める。