高齢者の鍵預かり安否確認 京都で取り組み、登録増える

2018年02月12日京都新聞

 
 高齢者の安全を見守る目的で、希望者の自宅の鍵を地元団体が預かる事業が、京都市山科区の安祥寺中学校区で進められている。全国的にもまだ珍しい取り組みだが、これまで45世帯が登録するなど徐々に広がり、定着化しつつある。

 2016年1月から始まったこの事業は、65歳以上の高齢者だけで暮らす世帯を対象に、希望者本人と家族が申請書を提出した上で、団体に鍵を預ける。

 新聞がたまっていたり、同じ洗濯物が何日も干されていたりするなど、異常に気づいた近隣住民や訪問介護者が警察署や地区の社会福祉協議会に連絡。呼び鈴を鳴らしても応答がない場合、預かった鍵で家の中に入り安否確認する仕組みだ。鍵は、夜間も宿直のいる地元の高齢者福祉施設が専用金庫で保管する。

 事業に取り組むのは、同中学校区内の安朱・山階・西野の3地区社協、地元の地域包括支援センターと民生児童委員、複数の福祉施設で組織する実行委員会。さらに区役所や山科署も協力する。

 きっかけは2年前、地域の見守りについて関係者が話し合う会議だった。「訪問日でも応答がないと心配」「異常があっても、鍵を壊してでも入るか判断が難しい」との声が上がり、鍵の預かり事業で先進地だった大阪府寝屋川市の例を参考にすることにした。

 実行委員会の住友正歳会長(78)は「学区レベルでの取り組みは、全国的にも珍しいと思う」といい、「この2年余りで登録件数は45件(世帯)と大きく増えた」と、手応えを感じている。申請者は親族が遠くに住む人が多いと指摘し、同学区内でも高齢化が急速に進むなかで「希望者はもっと多いのでは」とみている。

 これまで実際に鍵を開けた例は3件あり、2件は大事なかった。しかし昨年9月、異常に気づいた近隣住民の連絡で家の中に入ると、風呂場で倒れていた80代女性を発見した。病院に搬送し、現在は体調が回復したというが、「寒い冬だったら危なかった」と関係者は胸をなで下ろす。

 鍵を預けている学区内の独り暮らしの女性(87)は「鍵を預けておくと、紛失したときの予備になるし、いざというときには助けてもらえると思うので、安心感がある」と話す。
 一方で、夜間に異常な事態が起きた場合や、申し込み件数の増加に対応できるかなど、まだまだ「課題は多い」と住友さん。「少しずつ解決して次の世代につなげたい」と意気込みを語る。