広がる「見守り」サービス IoT技術を活用、家族に安心

2018年02月02日産経新聞

 
 離れて暮らす高齢の家族や認知症の患者の「見守り」サービスに取り組む企業が増えている。IoT(モノのインターネット)技術を活用したきめ細かな対応で、高齢者と家族の生活を支える。

 ◆タグで位置情報

 製薬会社のエーザイは、認知症の人や高齢者がどこにいるか、居場所の確認ができる支援ツール「Me-MAMORIO(ミマモリオ)」を、ベンチャー企業のマモリオ社とともに開発、昨年9月に発売した。認知症治療薬を開発・販売するエーザイは、認知症を軸とした高齢者の見守りに注力しており、全国110カ所の自治体・医師会と協定を結ぶ。ミマモリオはこうした活動を通して浮上した家族らの困りごとを解決しようと考えられたサービス。マモリオ社の落とし物防止タグ「MAMORIO(マモリオ)」の技術を応用した。

 ミマモリオは、直径37ミリ、厚さ5・8ミリ、重さ7グラムの丸いボタン形状のタグ。近距離無線通信「ブルートゥース」が内蔵され、専用アプリを入れたスマートフォンなどが位置情報の“発信器”となり、タグを持った人がいる場所が分かる仕組みだ。

 エーザイソリューション企画推進部の高井博文ディレクターは「見守りが必要な家族がいる人が個人で利用するのはもちろん、認知症の高齢者を地域でゆるやかに見守るのに役立てられれば」と期待を寄せる。

 竹原地域医療介護推進協議会(広島県竹原市)では、ミマモリオを使って行方不明者を捜せるかの実証実験を実施。同協議会の大田和弘会長は「位置情報によって、捜す人が不明者とみられる人に声をかけやすくなり、より早く見つけることができた。不明者が早く見つかれば、危険も回避でき、命を守ることにつながる」と話す。

 ◆使用状況で異変察知

 離れた家族の安否確認では、象印マホービンの電気ポット「i-PoT(アイポット)」が有名だ。無線通信機を内蔵したポットを使うと、その様子が離れて暮らす家族の携帯メールなどに届き、ポットが使われない日が続けば異変があったと察知できる。平成13年3月からサービスを開始し、利用者は28年末に累計1万人を突破している。

 関西電力は、電気の使用量を安否確認に利用したサービスを昨年1月に始めた。関電管内に住む家族(親)の電気使用量から生活リズムを推測し、いつもと異なるときは、家族(子)にメールやLINEで知らせてくれる。30分単位で電気の使用量が分かる「スマートメーター」への切り替えが進んだことで可能になったサービスで、関電管内の7割の世帯が対象となる。利用者からは「親とコミュニケーションを密に取るようになった」「今後も続けたい」などの声が寄せられ、好評という。

 東京ガスは、ガスの使用が1日なかった場合、その翌日、離れて暮らす家族にメールで知らせるサービスを14年から提供。昨年4月、消し忘れたガスを止めるなど複数のサービスを合わせた内容にリニューアルし、約6万人が利用する。

 ◆健康管理機能も

 警備業最大手のセコムは、リストバンド型のセンサーを高齢者につけてもらい、生活状況を見守る「セコム・マイドクターウォッチ」を昨年7月に導入した。

 同社の「ホームセキュリティ」契約者限定のオプションサービスだが、室内外で突然意識を失って倒れるなど体の動きを一定時間検出できない場合、セコムに自動で救急通報され、スタッフが駆けつけてくれる。スマホのアプリと連動すれば、睡眠や食事、歩行などの状態をチェックでき、健康管理に活用できる。