高齢者の健康 ICT見守り…賃貸物件で提供へ

2018年01月13日読売新聞

 
 盛岡市の不動産会社が県立大(滝沢市)などと連携し、ICT(情報通信技術)を使って入居者の健康状態を見守るサービス「おうちで安心」を4月頃から始める。高齢者の孤独死が社会問題になる中、入居者の健康状態の異変を早期に察知する狙いだ。

 システムは、ソフト開発会社「プロフェッショナル・ネットワークス」(東京都)が開発した。県立大社会福祉学部の小川晃子教授(63)が開発した安否確認システム「おげんき発信」のアプリを活用している。

 不動産会社は盛岡市を中心に県内約5900戸の賃貸物件を管理する同市本宮の「アート不動産」。管理物件の入居者と大家が、月額1000円(税別)でサービスを利用できる。

 利用者はスマートフォンでアプリを使い、その日の体調を「げんき」「ふつう」「わるい」から選択して発信。同社の社員やアプリに登録した家族が情報を確認できる。未発信の状態が一定期間続く時は、同社が入居者に電話をかけ、連絡がとれなければ直接訪問したり、家族に連絡したりする。

 小川教授は「民生委員も高齢化し、地域を回りきれないこともある。ICTの活用は見守りの確実性を高める」と強調する。

 導入の背景には高齢者の孤独死がある。同社の管理物件では多い年で孤独死が3件ほど発生するといい、「事故物件」になると、入居者を募るため家賃を下げざるを得ず、大家の収入が減る。遺体が長期間放置されると腐敗臭が残り、保証人がいない場合は大家が補修費を負担しなければならないこともある。孤独死を警戒して、大家が単身の高齢者との契約を嫌がるケースもあるという。

 同社の桜井大介社長(37)は「このシステムは、大家が高齢者を受け入れる上で安心材料になる。入居促進につながれば双方にとってプラスだ」と期待する。