高齢者施設、室内センサーで見守り 穴吹興産が導入

2018年01月11日日経新聞

 
 穴吹興産は中四国地域などで運営する高齢者向け施設に遠隔見守りサービスを導入する。居室に専用端末を設置し、音や人の動きなどの情報から室内の状況をリアルタイムで把握。異常があれば従業員らに通知し駆けつける。あらゆるモノとネットをつなぐ「IoT」の技術を活用し、施設内での事故のリスクを減らすとともに、従業員の人手不足にも対応する。

 穴吹興産子会社のあなぶきメディカルケア(高松市)が運営するサービス付き高齢者向け住宅などを対象に、富士通が開発した「リモートモニタリングサービス」を導入する。2月にも第1弾の運用を始め、順次対象施設を拡大。全29施設への早期導入を目指す。

 カメラのほか、音響や人感などのセンサーを搭載した専用端末を居室内に設置する。温度や湿度の変化も感知できる。室内で一定時間人の動きがなかったり、転倒などによる異常音が発生した場合に、ネットを通じて専用のコールセンターや従業員のパソコンやスマートフォン(スマホ)に通知する。施設の看護師や介護スタッフは端末からの応答や、居室への駆けつけで対応する。

 介護施設では、突然の傷病で高齢者の体調が悪化しても自力で従業員を呼べずに事故につながったり、従業員の対応が不必要でも高齢者が誤ってナースコールを押したりすることがある。そのため、介護スタッフらは定期巡回などで居室状況を確認しているが、巡回直後などの体調変化は見落としやすいという。

 遠隔見守りサービスを導入することで、高齢者の体調悪化をリアルタイムで把握し、迅速に対応できる。介護施設では人手不足が深刻化しており、駆けつけや定期巡回といった業務の負担軽減にもつなげる。

 端末の設置には1室当たり3000円程度の費用が必要。富士通との実証実験ではナースコールへの対応を5割以上削減できたという。あなぶきメディカルケアの高松市内の施設に導入した場合、夜間の従業員を2~3割減らせる効果がある。同社は省人化による余剰人員を施設近隣の住宅への訪問介護に充てるなど地域包括ケアシステムの構築も検討する。