賃貸向けにアプリ活用 高齢者の健康見守り アート不動産 プロフェッショナル・ネットワークス 県立大の小川研究室 来春から提供開始 「おうちで安心」
2017年12月16日盛岡タイムス
アート不動産(本社盛岡市、櫻井大介社長)とソフトウエア開発企業プロフェッショナル・ネットワークス(本社東京、島倉峰雄代表取締役)、県立大社会福祉学部の小川晃子研究室は、ICT(情報通信技術)を活用し、アパートなどに暮らす高齢者らの健康を見守るサービス「おうちで安心」を開発した。アート不動産が管理する物件で来春からサービスを提供する。全国的に入居者の高齢化が進む中、孤独死などの事例も少なからずある。見守りを充実させることで、居住高齢者、大家、双方に安心な環境を作り出し、空き物件の有効活用にもつなげていく。
「おうちで安心」は、スマートホンの専用アプリを利用し、入居者の健康状態をアート不動産社員と離れて暮らす家族が共有する仕組み。入居者自身が毎朝、専用アプリに健康状態を「げんき」「ふつう」「わるい」の3段階で登録すると、アート不動産の管理用パソコンや家族のスマートホンにも情報が自動的に送信される仕組み。未登録の場合は同社社員が電話をしたり、様子を見に行ったり、家族に連絡を取ったりして安否を確認する。
さらに、居室に取り付けた温度湿度センサーとドア開閉センサーから、熱中症危険レベルやドア開閉状況を把握するサービスもオプションとして用意。スマートホンの操作が難しい高齢者でも継続して安否を確認できるようにした。
月額のサービス利用料は千円(センサーによる温度湿度、ドア開閉情報などのチェックは別料金)。今月下旬から利用の受け付けを開始する。引っ越しシーズンのピークが終わる来年5月ごろから本格的なサービスを始める予定だ。
アート不動産が管理している物件は約5900戸。高齢化や核家族化が進んだ影響もあり、例年2、3件は「孤独死」の報告がある。発見が遅れれば、物件の改装費用が膨らみ、大家の負担も大きい。こうした事情から、高齢者への賃貸に慎重な大家も多く、住まいを借りたくても借りられない人が増えていた。
櫻井社長は「一人暮らしの高齢者だけでなく、障害者や持病を抱える人にとっても安心なサービス。空き物件を有効に活用することにつながれば、地域の活性化にもなる」と語る。
小川教授は、独居高齢者の安否確認システム「おげんき発信」をはじめ、宅配業者による見守り機能付き買い物支援サービスなど、ICTと地域の人的資源を組み合わせて、高齢者の生活を支えるコミュニティーづくりを進めてきた。「研究成果が社会で実装されていくことが大事。弱い立場にある人を受け入れ、支える、共生社会を形づくっていく上でも意義がある取り組み」と期待する。