自宅をまるっとIoT化できて2.5万円 「mouse スマートホーム」は買い?

2017年12月15日ITmedia PCUSER_


 日本のPCメーカーとして知られるマウスコンピューターは、自宅をスマートホームに変身させるための製品群「mouse スマートホーム」も発売していることをご存じだろうか。同社のPC製品同様、リーズナブルな価格で家庭のIoT化を手軽に行えるのが特徴だ。

 中核となる「ルームハブ」を中心に、スマホから家電製品への通電をオン・オフできる「スマートプラグ」、スマホから調光可能な「スマートLEDライト」、ドアや窓の閉め忘れを防げる「ドアセンサー」、そして人の動きを検知して他機器の動作と連動させる「モーションセンサー」など、そのラインアップは多岐にわたる。

 同社はスマートホームの基本アイテムと呼べる上記5つの機器をワンセットにした「スターターキット」を2017年の8月に発売した。価格は5つそろって2万4800円(税別)となっており、スマートホームを取りあえず体験してみたい層に向け、導入しやすい価格帯でのパッケージを目指したとする。10月には「PM2.5センサー」と「スマート空気清浄機」も発売し、シリーズのラインアップが出そろった。

 一方、スターターキットの発売からまだ半年もたっていないのだが、その後は音声でスマートホーム対応製品を操作する「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーが相次いで日本に上陸したことで、スマートホームを取り巻く環境は激変している。

 こうした中、mouse スマートホームを導入すると生活はどのように変わるのか、買いの製品なのか。今回はルームハブを中心に、ラインアップを一挙に試してみた。

●まずはスマートホームの中心となる「ルームハブ」を設定

 スマートホーム製品は数あれど、最初に中核となるルームハブをセットアップしなくては先に進めない。このルームハブは、他のスマートホーム対応製品をBluetooth接続で操作できることに加えて、赤外線リモコン機能を使って既存の家電製品も操れる。そうした意味でも真っ先にセットアップしておく必要がある。

 ルームハブの設定方法としては、まずはスマホにアプリをインストール。本体に電源を入れ、青いLEDが点灯した状態でアプリからアクセスし、Wi-FiのSSIDとパスワードを登録することで、利用できるようになる。ネットワーク機器を家庭内ネットワークに参加させるには、ごく一般的な手順だ。

 なお、このルームハブはWi-FiがIEEE 802.11b/g/n対応であり、5GHz帯に対応しない。筆者のように、自宅内のWi-Fiは5GHz帯に統一すべく、2.4GHz帯の機器は極力排除しつつあるユーザーにとっては少々つらい仕様である。後継モデルでは是非2.5GHz帯と5GHz帯の両方を選択できるようにしてほしいところだ。

 この他、Wi-Fiのステルス機能が有効になっているとうまく認識できない点も、注意する必要がある。

●赤外線リモコンが使える既存の家電製品もコントロール可能

 ルームハブは、この後に紹介するLEDライトやプラグ、PM2.5センサー、空気清浄機など本シリーズの機器との操作を仲介する機能に加えて、エアコンやテレビ、扇風機といった、赤外線リモコンが使える家電製品をコントロールする機能を備える。ここでは例としてエアコンの設定手順を紹介する。

 利用にあたっては、エアコン備え付けのリモコンをルームハブに学習させる。エアコン本体もしくはリモコンの型番をメーカー名などをキーに探す方法の他、リモコンの信号を送信して直接学習させるなどの方法も用意している。同様の設定は、スマートスピーカーと連携するスマートハブ製品でもよく見られ、手順的にそれほど違いはない。

 各スマートホーム製品をコントロールするためのリモコン画面は、他社製品では本物のリモコンとそっくりのボタンデザインを採用している場合もあるが、mouse スマートホームはテキストを中心とした簡潔なデザインだ。見やすい一方で、どこがタップ可能な部分なのか迷うこともあり、もう一工夫ほしい。

 1台のルームハブに登録できる機器の台数は、エアコン、扇風機、テレビの各1台となっている(この他、取扱説明書にはないが、STB1台も登録できる模様だ)。1つの部屋にこれらの機器が複数あることは考えにくいので、各1台でも問題ないのだが、それ以外の機器も登録できる自由度があればなおよかった。

●ユーザー待望の国内仕様「スマートプラグ」

 ルームハブは、赤外線リモコン機能で既存の家電製品を操作するだけでなく、本シリーズの機器もBluetoothを使って操作できる。さらに運転状況などのデータを蓄積したり、センサーと連携して自動運転させたりといったことも可能だ。

 このシリーズの中でも最も汎用(はんよう)性が高く、注目なのがスマートプラグだ。既存の家電製品にある電源プラグの根元に取り付け、離れた場所からスマホで電源のオン・オフを制御できる製品である。

 なぜこれが注目の製品かと言うと、Amazonなどで販売されているスマートプラグ製品は、そのほぼ全てが「技適」未取得とみられる海外製品で、法的に問題なく、まともに使える国内メーカーの製品が皆無に近いからだ。ルームハブとこのスマートプラグだけ真っ先に手に入れたいユーザーも少なくないはずだ。

 日本向けの製品ということで、2Pプラグを採用しているのも特徴だ。海外製品の多くはプラグが3Pであるため、そのまま日本に持ってきても3Pから2Pへの変換プラグが必要となり、なかなか対応製品が出てこない理由の1つになっている。それ故に現段階では貴重な製品と言える。

 実時に使ってみた限りは、電源をオン・オフするときの「カチッ」という音がやや騒々しいが、本製品は使い方を間違えると事故につながる危険もあるため、切り替わったことが音で分かるのは逆に好都合だ。あえてこのような仕様にしたのかもしれない。

 気を付けたいのは、1つのスイッチを繰り返し押すことで電源のオンとオフが切り替わるタイプの家電製品と組み合わせた場合、スマートプラグをリモートでオンにしただけでは家電製品の電源ボタンが押されたことにならず、手動による電源オンが別途必要になることだ。

 つまり接続する機器によっては、リモートで行えるのが電源のオフのみになってしまう。これは同種の製品全てに言えることであり、本製品のみの特徴というわけではないが(むしろ近年は安全性を考慮してこうした仕様の電源スイッチを採用した製品が多い)、初めて使う場合に思惑が外れてがっかりしやすいポイントでもある。

 組み合わせたい機器の仕様をよく確認しておいた方がよいだろう。

●明るさを調整できる「スマートLEDライト」

 スマートLEDライトは、スマホからの点灯と消灯に加えて、明るさを調整できることが特徴だ。スマホの画面内に表示されるスライダーを動かし、明るさのパーセンテージを指定して指を離すと、瞬時に指定した明るさへと変化する。

 この手の製品でよく挙がるPhilipsのスマートLED電球「Hue」が、無段階でスウッと変化するのとは対照的だ。

 明かりの色はホワイトの昼白色や昼光色ではなく、俗に電球色と呼ばれるオレンジ色だ。スポットなどに使うのならば問題ないが、一般的な部屋の明かりは昼白色や昼光色に統一されていることが多いと考えられるので、これらの置き換えを考えている場合は注意したい(本製品はPhilips Hueのように色自体を変える機能はない)。

●プラグやLEDライトと連携できる「モーションセンサー」

 mouse スマートホームには、家電を直接操作する機器と組み合わせて使えるセンサーも用意されている。

 モーションセンサーは、赤外線を使って人の動きなどを検知する製品だ。スマホに通知を送信できるだけでなく、前述のスマートプラグやスマートLEDライトと組み合わせて、人の動きを検知すると自動的に電源をオンするといった使い方が可能だ。

 本体サイズはやや大きいが、これは両面テープで壁面に固定した後、角度が自由に変えられるようにボールジョイントが根元に備わっているため。この構造により、固定した後でも角度調整の自由度が高い。センサーの感度も設定画面から調整できるので、使い方に応じた細かいカスタマイズが可能だ。

 やや気になるのは、後述のドアセンサーもそうだが、ルームハブとの接続方法がBluetoothであること。あまり距離が離れていると、Bluetoothの信号が届かない可能性がある。ルームハブ1台に対して接続可能なモーションセンサーの台数が1台であることからして、あまり大規模な導入は想定していないようだが、設置場所はよく検討すべきだ。

●ドアや窓の開閉を検知する「ドアセンサー」

 ドアセンサーは、その名の通りドアに取り付けて開閉を検知する機器で、2つのパーツの距離が離れれば「開いた」と見なされて通知される。前後に開くドアでも、左右に開くドアでも、どちらにも対応できる。

 用途として考えられるのは、ドアの開閉と連動させて前述のLEDライトをオンにするなど、スイッチレスでの使い方が1つ。またドアの開閉イコール在室と見なし、離れた場所から自宅内の子供や高齢者の安否確認に使う用途も考えられる。侵入者を検知する防犯用途での利用も考えられるが、こちらは前述のモーションセンサーの領分だろう。

 1つのルームハブに対して認識できるドアセンサーは最大3個となっている。一般的な家庭であれば3個もあれば十分だろうが(前述のようにBluetoothでの通信なので、離れすぎると信号が届かない可能性がある)、それ以上の数を取り付けたい場合は、ルームハブ自体の数を増やして対応することになる。

●室内のPM2.5濃度が分かるセンサーも

 ここまで紹介した製品は、いずれもスターターキットに含まれるものだが、同シリーズはそれ以外に、空調にまつわる2つの製品を用意している。

 1つはPM2.5センサーだ。室内のPM2.5濃度を測定し、「良好」「普通」「注意」の3段階で知らせてくれる。クリーナー機能は備えないが、後述する空気清浄機と連携し、PM2.5濃度が「普通」または「注意」になった場合に空気清浄機を運転させることもできる。

 実際に使ってみた限りでは、PM2.5濃度が正常範囲にあるうちは、スマホに通知が飛んで来ることもないので、今回紹介している機器の中では飛び抜けて(いい意味で)存在感のない製品だ。測定データは全て蓄積されており、グラフで表示できるので、きちんと動いているか気になればアプリを起動して表示してやればよい。

 ややもったいないのは、測定できるのがPM2.5のみだけということだろうか。温度や湿度についてはこのセンサーではなくルームハブ側で測定できるのだが、部屋の換気の目安となる二酸化炭素濃度についてはどちらも対応していない。今後のラインアップ追加に期待したいところだ。

●単独でも利用できるスマート空気清浄機

 もう1つはスマート空気清浄機だ。見た目は全く普通の空気清浄機で、機能についても同様なのだが、スマホから操作できる他、前述のようにPM2.5センサーと連携し、PM2.5濃度が上昇した場合にのみ運転を行うといった使い方ができる。また空気質のグラフ表示にも対応する。

 このスマート空気清浄機には単体のリモコンも標準添付されており、PM2.5センサーなどとの連携機能を除いては、単独での利用にも対応する。他の機器に比べて本体サイズがひときわ大きなこともあり、ラインアップの中ではやや異色の存在だ。

●ラインアップは充実、スマートスピーカーへの早期対応にも期待

 ざっと見てきたが、一通りの機能は過不足なくそろっており、かつそれらがリーズナブルな価格で手に入るということで好印象だ。リモコン画面のデザインがややそっけないのと、ホーム画面のアイコン配置はもう少し工夫してほしいところだが、全体を俯瞰して大きなウイークポイントになるわけではない。

 では、このmouse スマートホームキットが買いなのか否かと言われると、現時点では「用途による」というのが筆者の見解だ。それは本シリーズの利用スタイルが、大きく2通りに分けられることによる。

 例えば、モーションセンサーやドアセンサー、PM2.5センサーが反応することでLEDライトをつける、家電製品をオンにする、空気清浄機の運転を始めるなど、センサーを組み合わせた自動運転を前提とした使い方であれば、今回のラインアップで完結しており、かつ機能もそろっているので、今すぐ導入するだけの価値は十分にある。

 一方、センサーと組み合わせての利用以外に、自分の意志でオン・オフする機会も多いであろうスマートプラグやLEDライトは、現段階ではスマホからは操作できても、スマートスピーカーを使った音声での操作には対応していない。スマートスピーカーを活用している筆者の環境では、ひとまず対応待ちが望ましいという見解だ。

 ちなみに、本シリーズの製造元である台湾EQLのオリジナル製品群は、「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」に対応しており、Amazon EchoおよびGoogle Homeという2つのスマートスピーカーで利用できる。一方の本シリーズは、Amazon Alexaに対応予定であることは発表済みだが、現時点ではまだ実装されていない。

 スマートスピーカー対応は、今後こうしたスマートホーム製品の生命線と言えるだけに、これらの対応を待ってから判断しても、決して遅くはないだろう。逆にこれらがAmazon AlexaとGoogleアシスタントに両対応すれば、ラインアップが充実しており、かつ価格もリーズナブルなだけに、注目度は一気に上がる。対応を期待しつつ待ちたいところだ。