部屋さがし何度も断られ「死のうかな…」つらすぎる高齢者の引っ越し事情
2017年11月18日ホウドウキョク
神奈川県に住む80歳の山下有三さん(仮名)は目に涙を浮かべ苦悩を訴えた。
山下:
あきらめていますよ。だからこの間も死のうかなと思った…。
山下さんは現在、6畳二間の部屋で一人暮らしをしているが、老朽化による建て直しが決まり、立ち退きを迫られている。
しかし、不動産店を10軒以上回っても引っ越し先はなかなか見つからない。
山下:
不動産屋さんをいろいろ、あっちこっち行って、だけどなかなかないんです。「80歳じゃね」ってどこ行っても…
「高齢だから」と断られる
高齢者が転居する理由を調べたところ、「家賃」や「立ち退き」という声が多かった。
しかし「高齢」を理由に入居を断られるケースが今、問題になっている。
そこで国土交通省では先月「高齢や低収入を理由に入居を断らない」と登録した住宅に補助金を出す新制度を開始した。
国や自治体が対策に乗り出す、高齢者の引っ越し事情はどんなものなのか?
立ち退きを迫られた山下さんが探しているのは、現在と同等の家賃4万円台の部屋。
実は山下さんの収入は生活保護が頼りで、家賃を支払うと3万円ほどしか残らず、暮らしはギリギリ。
しかし、とくダネ!の荘口彰久リポーターが話を伺うと、部屋が借りられない原因は家賃とは別にあるという。
荘口:
なんで部屋を貸してくれないんだと思います?
山下:
私、身寄りがないから…。
山下さんは、かつて事業に失敗したことから離婚して、現在 保証人になってくれる人がいない。別れ別れになった子供たちに保証人になってくれと頼めないかと考え、ずっと探しているが見つからないという。
荘口:
部屋を探し始めたときは、もうすこし簡単に見つかると思っていました?
山下:
うん、あるんじゃないかとは思っていましたけど。諦めていますよ。だからこの間も死のうかなと思った時もありました。首つって死んじゃおうかなと思った時もありますよ…
山下さんの答えは途中から涙混じりになっていた。
保証人がいてもリスクがある
山下さんのような人のために、保証人の役割を代行する団体がある。
とくダネ!が取材した「高齢者住宅財団」は、月額家賃の約1.4%の料金で保証人を代行して入居を支援している。
家主側も万一の際の保証があるので、高齢者などと契約しやすくなるのだ。
しかし問題はそれだけではない。
賃貸住宅の家主からの相談を受ける「日本地主家主協会」によると、高齢者は入居後のリスクが払しょくできないという。
担当者:
大家さんには、入居した後で亡くなったり病気になったらどうしよう、というリスクがあるんです。
亡くなった場合、残された家財の処分は本来なら保証人が行うことになっているが、実際は家主が費用を負担して処分していることが多いという。
一歩先を行く取り組み
これらのリスクを払しょくする新たな取り組みが期待を集めている。
福岡市の社会福祉協議会が行っている「住まいサポート」は、高齢者の入居に協力してくれる不動産店を募集。
集まった協力店の中から、高齢者が希望する条件に近い物件を探し、本人に紹介するところまで行っている。
83歳の山中育子さん(仮名)は、年金と貯金を切り崩しながら家賃7万3千円のマンションに住んでいたが、去年とうとう貯金が底をついたため市に相談した。
すると現在住んでいる家賃3万円のアパートを見つけてきてくれたという。
山中:
市は何もしてくれないと思っていたんですよ。そしたら、もう市の方からドンドン入ってきてくれて話を聞いてくれて。本当に気持ちが落ち着きました。
さらに入居後の生活を見守る手厚いサービスも充実している。
電話のそばには、すぐサポートセンターに繋がる「緊急」ボタン。
毎朝9時50分には安否確認の「電話」がかかってくる。
他にも、亡くなった後の「家財処分」や部屋の「清掃」まで、本人と相談して決めていくという。
山中:
孤独死して腐ってたとか、ありますでしょ。(この暮らしなら)それはないと思うんですよ。
福岡市のこの仕組みで引っ越しした高齢者は、現在160人にのぼるという。最後に荘口リポーターから、ホッとする報告があった。
荘口:
皆さん気になっていると思いますが、冒頭に出てきた山下さんは、実は先週の金曜日に裁判所から強制退去命令が出たんですよ。
どうなるのかと思ったら、月曜日にむかし近所に住んでいた方が保証人になってくれると名乗り出てくれたんです。
それで部屋を見つけてくれて引っ越すことができるようになりました。
いや本当にギリギリでした。
明日は我が身じゃないですけど誰にでも起こりうることなんですよね。