郵便局員やヤクルトレディによる「高齢者見守りサービス」のアナログな良さ

2017年10月12日DIAMOND online


 高齢化が進む現代、日本の65歳以上人口のおよそ6人に1人、約593万人が1人暮らしをしている。その人数は15年前の2倍近い(総務省統計局「平成27年国勢調査」より)。

 高齢の親と離れて暮らす家族にとっては、「独りで倒れていやしないか」「寂しい思いをしていないか」と親の生活を案じながらも、忙しさや距離の問題から頻繁に訪問するのはなかなか難しいのが実態だろう。

 そんななか、離れた家族が高齢者の状況を把握できる、多様な製品・サービスが登場している。

 例えば、人感センサーを備えた機器を高齢者宅に置くことで、室内の人の動きがない場合に家族に安否確認を促すメールを送信したり、スタッフが駆けつけたりするサービス。あるいは、水道に取り付けた機器によって水道利用状況を収集し、活動状況や異変について家族にメールを送信するサービス。また、室内の様子を映像で確認できるモニターカメラは多機能化しており、音声のやりとりができるタイプや、温度センサー付きで気温差をケアできるタイプなどもある。

 しかし、こうした機器によるサービスは、家族の負担が少なく便利である一方、見守られる側にとっては「監視」されているような気持ちになることもあるのではないだろうか。

 そこで注目したいのが、郵便局がこの10月から始めた「みまもり訪問サービス」。直営郵便局の社員などが高齢者宅に月1回訪問し、30分程度の会話を通じて生活状況を確認した結果を家族に伝えるというものだ。全国に約2万ある直営郵便局のネットワークを活用した同サービスの狙いについて、日本郵便広報室はこう語る。

 「日本が直面している超高齢社会において、郵便局の強みを活かして地域社会に貢献するとともに、将来的には、郵便局ネットワークの価値向上や顧客基盤の強化につなげていきたいと考えております」

● 注目度高まる アナログな見守りの効果とは

 この「みまもり訪問サービス」で行う生活状況のヒアリング項目には、最大10項目が設定可能。「体調の状態」「食事の規則性」「心配事の有無」など固定の7項目に、家族が高齢者の状況に合わせて「知り合いとの交流の頻度」「不審な業者との接触の有無」「持病の状態」などから3項目を選んで追加できる。

 聞き取った情報はタブレット端末に入力し、家族にメールで送信される。月額利用料は2500円(税別)。さらに、もしもの時に警備会社が駆けつけるオプションサービスを、月額800~3100円(税別/駆けつけ料金は別途)で付けることもできる。

 実際にサービスを利用する高齢者やその家族からの評判は上々だ。高齢者と遠方の家族が互いに安心感を持てたり、両者のつながりをより強めたりする効果が上がっている。

 「ご利用者様から『身体の体調が良くない。買い物に行けない』等のお話があった際、その旨をご家族様に報告したことがご家族の帰省回数が増えるきっかけになるなど、ご利用者様に喜んでいただいています。また、ご家族様への報告書にご利用者様の写真を添付することで、ご家族様から『元気な姿が確認できて安心した』との声をいただいております」(日本郵便広報室)

 また、こうした人による見守りサービスが、ふるさと納税の返礼品となる例も。福島県須賀川市は今年、「ヤクルトレディ」と連携して、市内で暮らす高齢者の安否などを確認する「ヤクルト配達見守り訪問」サービスをふるさと納税の返礼品に加えた。ヤクルトレディが週に1回、指定された世帯にヤクルト製品を届け、高齢者の安否や体調の変化などの確認を行うもので、寄付額2万5000円で3ヵ月間サービスが受けられる。同様の取り組みは栃木県小山市でも開始されている。

 AI時代にじわりと注目度が上がりつつある、人手によるアナログな見守りサービス。外出が容易でない高齢者もいるなか、このように在宅しながら人とふれあう機会は息抜きや楽しみの1つになりうる。生命の安全という観点から、人感センサーやカメラなどの機器設置による常時見守りが必要な場合もあるだろうが、そこに人のつながりによる見守りを組み合わせれば、より強力なセーフティネットになりそうだ。