監視されるのは嫌!見守りサービスを活用して親子の溝を埋める方法

2017年10月06日@DIME


いま、さまざまな形の「見守りサービス」が増えている。しかし見守られる側からすれば、「監視されている」感に抵抗を感じることも否めない。

そこで「監視」「見張り」を感じさせない、アプリを使うタイプや親の生活を遠隔からさりげなく確認するタイプなどが出てきている。介護ジャーナリストの見解と共に、親との適度なかかわり方や見守りサービスの活用方法を探ってみた。

■見守りサービスは必要か?

うちの親もいい年だからそろそろ見守りのことを考えたほうがいいだろうか。見守りサービスがネットやテレビで紹介されるたびに、そう脳裏に浮かんでいる人もいるかもしれない。

シード・プランニングが行った、一人暮らしの親を持つ40~69歳以上の男女300人に対する「高齢者見守り・緊急通報サービスの市場動向とニーズ調査」(2005年)によると、緊急通報・安否確認サービスを「利用している」が8.7%、「具体的に検討中」が0.3%、「必要性を強く感じる」が13.7%と、必要性を感じているのは全体の約23%にとどまった。

しかし「いずれ必要かもしれない」と答えた人が50.0%にも上ったことから、気になっている人は多いようだ。

介護ジャーナリストの小山朝子氏は、見守りサービスの必要性について次のように話す。

「自分の親は元気そうに出歩いているし、安否確認なんてまだ他人ごとだと思っている人が多いかもしれませんが、果たして自分の親だけは認知症にならない、あるいは我が家に限って介護が必要になることはないと言い切れる人はいるでしょうか。

緊急通報・安否確認サービスは、無理なく親の支援をしていきたいと思うビジネスパーソンには心強いサービスといえるでしょう」

小山氏は、今後見守りサービスの必要性が高まると予想される背景として次の点を挙げる。

●「2025年問題」で後期高齢者が増える見込み

「昨今、団塊の世代が2025年に後期高齢者となることで生じる2025年問題が懸念されています。2025年、全人口に対する75歳以上の後期高齢者の割合は18%を超えると見込まれます。ちなみに、人は75歳を過ぎると人は介護が必要になる割合が高くなります。(厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」(平成24年度)より)」

●団塊ジュニアには一人っ子が多い 介護の分担化のむずかしさも

「団塊ジュニアを中心とする世代の子は一人っ子が多いこと、さらに2030年には生涯未婚率が男性3割、女性は2割を超えるといわれるように未婚率が高くなってきており、兄弟間で介護を担うなどの介護の分担化もむずかしくなります」

■適した見守りサービス選定を

小山氏によると、見守りサービスといってもさまざまな種類があり、一説によると、現在200以上のサービスがあるそうだ。自分のライフスタイルや、親や家族状態に適したサービスを選ぶことがポイントだという。例えば、下記のように選び方の例を挙げてもらった。

●「宅配ついで型」

定期的に食事を届けてくれ、安全かどうかの確認もしてくれる見守りサービス。

<向いているケース>
・親が認知症で調理ができなくなったケース
・勝手に外出して行方不明になるのが心配なケース
・上の二つが重なる場合

●『センサー型』

センサーで住環境や活動度をサーチする見守りサービス。

<向いているケース>
・比較的、親の自立度が高く、健康に関心が高いケース
・認知症で室内の温度調整が困難なケース

■見守られる側の不快感

しかしながら、こうした見守りサービスがIT・ネットの普及でどんどん高性能化し、取得できる情報は増えているものの、それにつれて見守られる立場としては「監視」されているという不快感が増してくる。

東京都福祉保健局の「高齢者等のための見守りガイドブック」では、気を付けなければならないこととして「見守る人、見守られる人という監視の関係となってしまい、個人の自由や生活を阻害してしまうこと」が挙げられている。見守りは監視と紙一重であることを常に念頭に置かなければならない。

小山氏は「監視」にならないよう「つかずはなれず」の見守りを勧める。

「子どもがよかれと思って見守りサービスを導入しても、必要以上に関わろうとしてしまうために親側が抵抗を感じ、予期せぬケンカになるようなケースは現場でもよく耳にします。『つかずはなれず』、適度な距離感でつながり合うことが大切です。見守りサービスを導入する際には、子ども側がしっかり情報収集をして、丁寧に親側に伝え、お膳立てしてあげることも重要ではないでしょうか」

■監視になりにくい見守りサービス

昨今、親とのつながりをほどよく維持してくれる見守りサービスが出てきている。

例えば、次のようなサービスだ。

●日本光電工業「SUKOYAKA」

親の自宅にホームステーションを置くタイプ。搭載されている「動きセンサ」や「温度・湿度・照度センサ」により室内活動度、温度、照度がわかる。家族がインターネット上で確認できるほか、体調変化のリスクや予兆をメールで知らせてくれる機能も。伝言板機能によって親とコミュニケーションを取ることもできる。

●NTTドコモ「つながりほっとサポート」

親の携帯やスマートフォンの歩数計の歩数や電池残量などを通して利用状況や体調の情報を取得。家族などの指定メンバーにメールで知らせることができる。専用アプリを入れるだけで、使用は月額無料。

●アクサ生命「アーユーOK」

シニアと家族をつなぐコミュニケーションアプリ。親が専用アプリの「助けを呼ぶ」ボタンを押すと、待機している専門オペレーターが家族や消防に通報を行う。家族側が親の安否を確認したい場合にも、オペレーターを通して安否確認がされる。家族間でメッセージや写真のやりとりも可能。

●オリックス自動車「あんしん運転 Ever Drive」

親の運転する車を見守る自動車IoTを活用したサービス。専用車載機を取り付けると、危険な運転、現在地、走行軌跡などの運転状況をリアルタイムで、パソコンやスマホで可視化。

このように、親子のコミュニケーションが生まれ、よりカジュアルに親の状況を把握しながら、もしもの場合に備えることができる見守りサービスがトレンドになってきているようだ。

■「監視」にならない「つかずはなれず」の親子コミュニケーション術

小山氏に、監視にならず、つかずはなれず、いい関係を保つための親子コミュニケーション術を聞いた。

「離れて暮らす親を心配する子世代の気持ちはわかりますが、親世代からすると『自分はまだ元気』『子どもには迷惑をかけたくない』との思いを抱く人も多いものです。

親に対しては、先々のことをとやかく言うより、何気ない会話の中で必要な情報、例えば主治医、服用している薬、親しい友人の名前、保険証の保管場所などをそれとなく聞いておくと、いざというときに慌てずに済みます。

我が家ではエンディング・ノートを用意し、万一のときに対応ができるよう、自分の情報や医療・介護が必要になったときに役立つ情報を記入してもらっています。

コミュニケーションの手段は会話だけはありません。面と向かって話しにくいことはこうしたツールを活用するのも一案です」