東京23区だけで238人 20~30代の「孤独死」なぜ増えた
2017年01月27日日刊ゲンダイ
「孤独死」といえば、独居老人というイメージが強いが、近年、20~30代の若者が自宅でひっそり亡くなり、発見されずに放置されるケースが増えているという。
都監察医務院のデータによると、15年に23区内で孤独死した20~30代は計238人。男性が8割近くを占めている。13年は246人、14年は260人と、ここ数年は250人前後で“高止まり”している。
「病死、不審死、自殺などの異状死のうち、自宅で死亡した一人暮らしの人――これが孤独死の定義です。ここ毎年、若者でも一定数います」(同院担当者)
ちなみに厚労省では、「社会から孤立した結果、死後、長時間放置された事例」を「孤立死」としているが、若者の孤独死は何も都内に限った話ではない。
日本少額短期保険協会の「孤独死の現状レポート」(16年3月)によると、年代別では男女とも60代が最も多いのだが、女性は30、40代がそれに次ぐ。発見までの日数は平均で死後20日というから、切ない。
■フリーターの増加も一因
一人暮らしの娘を訪ねた親が、インターホンを鳴らしても応答がないため、管理会社に連絡。ようやく娘の孤独死を発見した、なんてケースもあるという。
同リポートでも「孤独死は決して高齢者だけの問題ではない。もっと幅広い年齢層にわたる対策を構築する必要がある」と指摘している。「孤独死のリアル」(講談社現代新書)の著者で、淑徳大教授の結城康博氏(社会福祉学)が言う。
「若者の孤独死が増えたのは契約、派遣社員、フリーターの増加も一因です。彼らが数日間、無断欠勤したぐらいでは、会社は心配してくれない。体調不良で動けなくなっていても見過ごされがちで、亡くなっても気付かれにくい。また、一人っ子が増え、一人でいる方がラク、友達関係も希薄という若者が増えたせいもある。コミュニケーション能力が低下し、素直に感情を出したり、他人に助けを求めることができない若者は珍しくありません。家賃の支払いに困り、食生活が偏って体調を崩しても、友人はもちろん、家族にすら言い出せないのです」
雇用も収入も不安定だから、気軽に病院に行けないことも問題だ。結城教授によると、わが子がフリーター(契約、派遣社員)で、たまに会って話をしても「友達」の話題が出ない場合は、孤独死するリスクが高いという。要注意だ。