AI活用で孤独死防ぐ 信大など見守りシステム開発

2017年01月24日信濃毎日新聞

 
 信州大工学部(長野市)と秋田県立大システム科学技術学部が、人の動きなどを感知するセンサーと人工知能(AI)を組み合わせ、高齢者の事故や孤独死を防ぐ見守りシステムを開発した。

 就寝や外出といった高齢者の日常の動きを検知して情報を蓄積し、AIが「異常」と判断した場合に家族らに通報する。高齢者施設などに設置された従来のシステムより安価での導入が可能といい、個人宅への普及も視野に置く。2、3年後の実用化を目指している。

 開発したシステムの名称は「MaMoRu―Kun(まもるくん)」。室内に置いた動体検知センサーを備えた「センサーエージェント」が人の動きを検知するほか、枕やベッドに付けた圧力センサーなどの情報、ICタグ付きの鍵の信号、家電のリモコンの作動情報を集め、離れた場所にあるサーバーに送り続ける。「在室中に長時間、動きがない」「長時間、室内に戻っていない」といった状況からAIが「異常」と判断すると、関係者のスマートフォンなどに知らせる。

 信大工学部の和崎克己教授(情報工学)によると、高齢者施設などが導入してきたシステムは徘徊(はいかい)防止などが目的で、ベッドにセンサーを設置し、ベッドを離れたかどうかを知らせるタイプが主流。異常の有無は駆け付けた施設職員らが確認してきた。誤検知を減らすには比較的高性能のセンサーが必要で、個人宅で同様のシステムを導入すると50万円ほどかかるという。

 開発したシステムは複数のセンサーが送る情報を点数化し、AIが日常の行動パターンを踏まえて総合判断するため、より高い精度で異常を見分け、知らせることが可能。複数の情報を基にするため、センサーは従来より簡易なもので済むといい、経費は10万円以下に抑えることが可能とみている。映像カメラや人の目を介さずセンサーとAIが日常生活を見守ることでプライバシーを守る効果もある。

 信大工学部の和崎教授と新村正明准教授(情報工学)が、秋田県立大の下井信浩教授(ロボット工学)らと開発。総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)の採択を受けた。2017年度に1人暮らしの高齢者宅で実証試験を行い、精度向上を図る。

 厚生労働省の人口動態統計によると、死亡時に立会者がおらず、死因を特定できない死亡者数は2000年の1027人から、15年は2433人まで増加した。和崎教授は「高齢者の異変は少しでも早く気が付けば、違う結果になっていたケースもある。不幸な事故を無くしたい」としている。4月中旬に米国で開かれるコンピューターシステム関連の国際会議で成果を発表する。