離れて暮らす高齢の親を見守るサービスあれこれ

2017年01月23日AERA

 
 年末年始に実家に帰省して、親の老いを感じた人も多かったのではないだろうか。両親の介護や実家の管理、財産の処分、姑問題など、そろそろ考えてみませんか。AERA 2017年1月23日号では「家族問題」を大特集。その中から、離れて暮らす高齢の親を見守ってくれるサービスを紹介する。

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 2016年秋、日本郵政が日本IBMやNTTドコモ、セコムなど異業種8社で新会社を設立し、高齢者の見守りや生活支援のサービスに参入すると報じられた。郵便局員が高齢者の自宅を訪問して健康状態などを確認したり、買い物代行や健康管理まで担う総合的な生活支援サービスを展開するという。

 日本郵政に問い合わせると「当社が発表したものではありません」(広報)とのことだが、同社はすでに郵便局員がお年寄りの自宅を訪問して、様子を家族に報告する見守りサービスを月額1980円(税別)から提供しているほか、タブレット端末を活用した生活支援の実証実験も行っており、「事業化を目指して詰めの協議を行っている段階」(広報)とのことだ。同社は過疎地や離島など民間企業ではカバーしにくい地域も含め日本全国に拠点を持つことから、参加する異業種企業の窓口となって、高齢者の見守りを行っていくことが期待される。

 同様に地方できめ細かい拠点網を持つ地方銀行も、警備会社などと連携して見守りサービスに参入する動きがみられる。鹿児島銀行では16年に、綜合警備保障の高齢者見守りサービスを顧客に向けて割引価格で仲介するサービスを開始した。

「子どもが都会に出てしまって、高齢者だけで暮らす世帯をサポートするとともに、都市部に住む子ども世代が鹿児島銀行に親しみを持っていただくきっかけとしたい」(鹿児島銀行担当者)

 最近の地銀は、地方の高齢者の資産が都市部に住む子どもに相続されることで、預金が流出するという問題を抱えている。資産を相続する次世代とつながりを持ち、相続後も引き続き取引を続けてもらうことは彼らの死活問題ともいえ、こうした事情が見守りサービスへの参入を促しているようだ。

 宮城県では16年に県内に本店がある10金融機関と、「高齢者地域見守りに関する協定」を締結した。窓口や訪問先でお年寄りに接することの多い金融機関の職員が、認知症などが疑われる異変を感じた時に市町村の高齢者担当窓口に通報する仕組みだ。

●人の動きや室温を検知

「たとえば普段はきちんとしている方がパジャマ姿で窓口を訪れたり、郵便受けに新聞がたまっていたりするような場合に知らせてもらえれば適切な対処ができます」(宮城県担当者)

 高齢者と接する機会の多い金融機関は頼もしい存在ではあるが、人の手を介さない簡易な見守りサービスも数多く販売されている。インタープロの「みまもりステーション」は、お年寄りの自宅にセンサー機能を搭載したタブレット端末を設置することで人の動きや室温などを検知する。離れて暮らす家族のスマートフォンやパソコンでいつでも確認できるほか、一定時間動きがないとメールで連絡が来る。お年寄りから連絡できる通報ボタンもある。

●無料のサービスも

 車を運転する親なら、交通事故も心配だ。最近は高齢ドライバーが運転免許証を自主返納すると、自治体が企業と提携して様々な特典を提供する制度が広がっている。金融機関の預金金利が上乗せされたり、商店などでの割引といった内容が多いが、神奈川や大阪などではユニクエスト・オンラインの「小さなお葬式」の葬儀料金が割引になるユニークな特典もある。
 なかには無料で使えるサービスも。NTTドコモの「つながりほっとサポート」は、お年寄りが携帯を使うと自動で家族にメールで知らせてくれるサービスだ。携帯を使わなかった日もその旨や電池残量を知らせる定期メールが発信される。対応端末は限られるが、普段から携帯を使う親なら負担もなく、手軽に利用できるのがメリットだ。

 毎日親に電話をかけるのが一番いいのだろうが、忙しい現役世代には難しい。便利なサービスも活用しながら親を見守っていきたい。