異業種が介護関連ビジネスに本腰

2017年01月18日化学工業日報

 
 介護関連事業に本腰を入れる企業がエレクトロニクスを中心に増加傾向にある。例えば昨年末、理化学研究所と京都大学、オムロンは人工知能(AI)の研究に着手したが、医療や健康のほか介護分野で多くの用途に使えるAIのソフトウエア開発を目指している。

 ヒューマン・インターフェースデバイスを手掛けるMoff(モフ)は、三菱総合研究所と業務・資本提携を締結した。介護予防・リハビリなどのウェルネス分野で、ウエアラブルIoT(モノのインターネット)を活用した新サービスを展開するのが目的だ。体に装着した「Moffバンド」でリアルタイムに身体機能データを取得し、利用者本人が運動の結果を確認。身体機能の回復と介護予防の効果を高めるサービスを共同で開発する。

 商社も介護事業への取り組みを進めている。CBCは、中国で介護・福祉関連ビジネスを本格化。介護用品・設備販売と、介護施設の開設やその運営コンサルタント、人材育成などからなる日本の介護スタイルを一括して提供していく。エレクトロニクス商社のリョーサンは、見守り・介護分野で、ドップラーセンサーを活用したモニタリングや独居高齢者向け安否確認システムを提案する。

 政府も介護への関心を高めている。2017年度の一般会計の予算のなかで、医療・介護などの社会保障関係費を当初予算よりも多い32兆4735億円とした。そのうち厚生労働省分は30兆2483億円で、介護は3兆130億円となっている。

 年々高齢化が進む一方で出生率が低下し、介護に携わる人材は不足している。そのなかでエレクトロニクスなど介護と関係が薄かった業種で参入を図る企業が増えてきた。ICT(情報通信技術)やIoTに関連する技術が発達し、各企業が保有する技術を有効活用できると判断したためだろう。
 介護市場は国内だけに止まらない。CBCのように、巨大な市場が見込まれる中国での展開を本格化する企業も出始めた。中国は一人っ子政策の影響もあって高齢者を家族で介護するには負担が大きく、施設への入居が増加する見通し。富裕層の増加もあり、日本式の「お金はかかるが手厚い介護スタイル」を望む声が多いようだ。

 ただ異業種による介護関連事業は、経験が少ないこともあり単独では困難をともなう。知見を持つ介護事業者などとの連携が不可欠であり今後、そういったケースが増えていくだろう。老老介護や介護離職が珍しくない現状、いかに介護負担を軽くするかは社会的な重要問題。異業種の参入を歓迎したい。