県営住宅に住む高齢者、「電話で安否確認」定着 静岡

2017年01月18日静岡新聞

 
 県営住宅に住む高齢者の孤独死を防ぐ静岡県住宅供給公社の安否確認システム「高齢者テレフォン安心サービス」が、提供開始から5年を迎えた。利用者は増え、見守り手段の一つとして定着してきた。一方、高齢化の急速な進展で電話サービスだけでなく、民間との連携による新たな対応策も不可欠となっている。

 電話サービスは月2回、決められた曜日と時間帯に公社職員が利用者に安否や健康確認の電話をかける。3回かけて応答がなければ登録した緊急連絡先に連絡し、つながらない場合は職員が立ち入り調査を行う。

 2011年度に大規模な6団地64人を対象にサービスを開始した。段階的に対象団地を増やし、16年11月現在で県営の全143団地244人が利用する。沼津市の県営今沢団地で1人暮らしの無職の女性(84)は4年前に登録した。「夫と死別し、親族も近くにいないので電話はありがたい」と語る。同団地の無職の男性(74)は「会話するだけでも安心につながる」と話す。

 県営住宅の住民の高齢化は急速に進み、1人暮らしの高齢者の世帯も増えている。ただ、登録は原則、親族の緊急連絡先を届けることが条件。サービス担当は4人と限られ、身よりがなく登録できない高齢者もいる。

 こうした現状に、公社は見守りの強化を進めている。16年1月に県新聞販売連合会や宅配便業者などと協定を結び、登録の有無に関係なく居住者に異変があった際、公社に連絡する取り組みを始めた。17年春には、セブン-イレブンによる食料品などの宅配サービスを沼津市の県営原団地でスタートさせる予定。自治会と協力して団地内での高齢者の居場所づくりにも力を入れている。

 同公社の担当職員は「安否電話を含めた多様な見守り活動と居場所づくりの両輪で高齢者の孤立を防ぎたい」と話している。

 <メモ>県営住宅の高齢者(65歳以上)のみの世帯は2000年度の1370戸から、16年度には4230戸と約3倍に増えた。全体の入居戸数は1万4600戸から1万2634戸に減る中で、高齢化率は8・3%から27・2%に上昇した。

 「高齢者テレフォン安心サービス」の利用者が孤独死したケースはサービス開始から16年11月末までに2件。利用者本人や親族と連絡が取れず、県住宅供給公社の職員が安否確認調査を行ったのは3件だった。