北陸の中小・ベンチャー、ITで高齢者見守り 相次ぎ開発

2017年01月11日日経新聞

 
 北陸の中小・ベンチャー企業などが情報通信技術(ICT)を使った地域の高齢者を見守るシステムを相次ぎ提供する。宅配員を通じて独居高齢者の詳細な安否情報を家族に通知したり、無線装置付きの「お守り」で認知症患者の徘徊(はいかい)を防いだりする。宅配業者や介護施設に導入を促し、人手不足に悩む福祉現場の負担軽減につなげる。

 弁当宅配のリジョイスカンパニー(石川県津幡町)は宅配員を通じ、一人暮らしの高齢者の状態を迅速・詳細に家族に知らせるシステムを開発する。IT企業のリンケージ(金沢市)や石川県内2大学と協力。現在展開中の安否確認の無料メールサービスを改良し、年内に全国の配食業者などへ販売を始める。

 弁当などを日々届ける宅配員が高齢者の安否を確認し、食欲や部屋の温度・湿度といった情報を携帯端末で入力する。自宅の玄関に取り付けたICタグに端末をかざすと内容がメールで親族に届く。赤井純一代表は「対面でしか気づけない高齢者の小さな異変も見逃さず、万一の事態を防ぐ」と話す。

 安否情報はサーバーを通じ医療・介護従事者とも共有できるようにする。システム利用料は宅配業向けが月額3240円にする。併せて高齢者福祉を統括する自治体にもシステムを売り込む。自治体向けは複数の宅配業者が送信する安否情報を集約し、過去の履歴も閲覧できる機能を持たせる。利用料は月5万4000円を想定する。

 介護施設向けサービスのグローバルアミュレット(金沢市)は無線通信で認知症患者の徘徊を防ぐシステムの販売を始めた。電波を発信する装置を入れた「お守り」を高齢者に持たせ、外へ出ると受信機に反応して介護者らの端末に通知する。

 半径450メートルまで通信でき、無線装置の電池は1年3カ月持続するなど高い性能をアピールする。石川県白山市で今春開所する介護施設への納入が決定。全国に営業所を設けて販路を広げる。サービス料は月7000円で、介護保険利用で700円となる。

 富山県立大学は高齢者の呼吸や体温をセンサーで検知し見守りに役立てる実験に取り組む。防犯サービス会社のセキュリティハウス福井(福井市)も通信機器を使った認知症患者の徘徊検知システムを展開し、受注を増やしている。

 人口減などで福祉分野の人手不足は深刻になっている。厚生労働省によると、北陸3県の介護人材の有効求人倍率は2.4~3.7倍と、全職業平均(1.3~1.5倍)を大幅に上回る。認知症患者の徘徊による事故も発生しており、各社はICTを使って負担減や高齢者の安全確保につなげる。