<紀伊水害5年>高齢者安否 スマホで確認

2016年8月25日読売新聞


 2011年9月の紀伊水害で大きな被害を受けた五條市大塔町で、高齢者の健康づくりや安否確認に役立つアプリを入れたスマートフォン(スマホ)を貸し出す県の実証実験が始まった。高齢化率が60%を超える中、高齢者にも扱いやすいよう工夫を凝らし、遠隔地からも住民を見守ることができるようにする試み。24日には、市大塔支所で住民向けの説明会があった。(熱田純一)

 貸し出すのは、県が開発した「生活支援スマホ」。アプリの歩数計機能を生かし、歩数のデータが事前登録した家族や、市の担当課へメールで定期的に届く仕組み。データに変化がなければ、病気で寝込むなどの異状を察知できる。

 更に、本人が希望すれば、全地球測位システム(GPS)の機能を使って居場所がわかり、万一の時、迅速に駆けつけることも可能だ。

 また、家族など緊急の連絡先や、かかりつけの病院などへの電話は、高齢者でも簡単にかけられるよう工夫している。同市のほか、御所市と下市町でも貸し出しが始まり、近く東吉野村にも導入。来年2月末までに計70人に利用してもらい、使い勝手などを検証する。

 大塔地区の人口は5年間で3割以上減り、4月現在で309人。このうち65歳以上が187人と、住民の60・5%を占める。市は高齢者の孤立化を防ごうと、昨年秋から県南部のスーパー・吉野ストアに委託して移動販売を始めるなどの施策を打ち出している。

 この日の説明会には、希望した住民14人のうち5人が出席。同市の場合、移動販売車のドライバーにもメールが届き、巡回時に様子を確認できるようになっていると説明された。

 スマホを触るのは初めてという中田良子さん(81)は「歩数計の数字が楽しみ。スマホで調べものもできるので、生活の幅が広がりそう」と喜び、迫豊(83)は「携帯電話さえ持ったことがないので不安だが、いざという時に役立つならありがたい」と話していた。

 県健康づくり推進課と市企業観光戦略課の担当者は「遠方に住むお孫さんやご近所同士で写真のやりとりをするなど、コミュニケーション手段としても活用してほしい」としている。