高齢者を見守るIoT ニフティ熱中症予防

2016年8月02日日経新聞


 ニフティやソフトバンクグループなどのIT(情報技術)企業が自宅見守りサービスに力を入れている。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の技術を生かしてエアコンを遠隔制御できるサービスなどが増え、自宅で熱中症にかかりやすい高齢者の見守りや防犯に役立つ。7月28日に関東地方で梅雨が明けて夏本番。各社のサービス競争も熱くなりそうだ。

 「室温が上がってきているのでエアコンのスイッチを入れますね」。猛暑で有名な埼玉県熊谷市のNPO法人日本福祉ネットワーク(埼玉県熊谷市)のオフィスでは、こんな光景が増えている。介護スタッフが高齢者と電話で話しながら手元のパソコンを操作すると、遠く離れた高齢者宅のエアコンの電源が入る。

 この事業者はニフティの新サービス「おへやプラスPRO」を導入している。高齢者の自宅内に小型のセンサーと通信機器を置くだけで室内の温度と湿度などがわかる。携帯通信網を通じてデータを集め、事業者のスタッフは事務所のパソコンで状況を確認できる。

 熊谷市では条件次第では室温が40度を超えることがあるという。「高齢者は温度に鈍感になり体温調整の機能も低下しがちだ」とニフティのネットワークサービス事業部の沢木然氏は話す。

 介護スタッフがエアコンをつけるように伝えても忘れてしまう高齢者が少なくないという。日本福祉ネットワークの山中規光理事長は「高齢者の体調や生活の変化に素早く気づける」と新サービスを評価する。

 ソフトバンクコマース&サービス(東京・港)も5月末から家庭向けの通信機器「iリモコン Wi-Fi(SM)」を販売している。小型電子機器開発のグラモ(東京・豊島)と共同開発した。

 機器を室内に置くと赤外線で家電を遠隔操作できる。外出先からスマートフォン(スマホ)アプリから帰宅前にエアコンを作動させられる。全地球測位システム(GPS)と連動させて、外出するとエアコンを自動で消したり自宅に近づくと照明を付けたりできる。

 自宅のスマートメーター(次世代電力計)と無線で通信し、インターネットを通じてデータを集める機能も搭載。スマホアプリで電気の使用量と料金がわかるため電気代がかさむ夏の節電にもつながりやすい。

 防犯に役立つサービスも充実してきた。NTTドコモは7月に水漏れや鍵の紛失などのトラブル時に出張費と作業費無料で駆けつける新サービス「dリビング」を始めた。同サービスを契約するとタブレット(多機能携帯端末)のカメラ機能を使って室内の様子を撮影し、手元のスマホの専用アプリで確認できる。