1人暮らしの高齢者世帯、水道メーターで見守り 産学官連携、長野・坂城町で実証実験へ

2016年7月22日産経新聞


 増加する1人暮らし高齢者世帯の安心を確保するために県企業局は、坂城町をモデル地区として水道メーターを使った見守りシステムの実用化に動き出した。来年度の運用開始に向けて産学官一体の研究会を設置し、検討作業に入った。目指すは、日常生活のルーティンとなっている水道の利用状況から高齢者世帯に起こった異変を感知し、家族や地域の見守りボランティアなどに知らせる仕組みの構築だ。

                     

 使用するのは、東洋計器(松本市)が平成26年に国内で初めて開発した水道メーターを活用した高齢者見守りシステム。電子式水道メーターに接続した通信装置を1人暮らしの高齢者世帯に置き、水道の利用状況について、離れて暮らす家族や地域の民生委員、見守りボランティアなど最大10人に電子メールの配信を可能にした。

 メーターは、見守り対象の高齢者の起床後の水道利用で1日の生活行動の開始を知らせるほか、例えば2時間以上の水道の継続使用や8時間以上の水道未使用の場合に機器が生活に異常があったと判断する。こうした時間設定は変更でき、不在の情報はネット上の掲示板で共有可能だ。

 東洋計器の土田泰秀社長は「赤外線センサーなど他の仕組みを用いた見守りシステムはあるが、誤作動も多い。水道の使用という確実な生活動作で見守り対象者に負担をかけることなく、きめ細やかな確認ができる」とメリットを強調する。

 同社は27年夏から岐阜県郡上市でNPO法人とシステムの運用試験を行っているが、行政機関とタッグを組んで一つの自治体で実用化を図るのは初めて。坂城町をモデル地区としたのは、町全域が県企業局の水道事業供給エリアで、人口が1万5千人ほどのコンパクトな規模であることが決め手となった。

 県企業局は、来年度の実証実験を兼ねた運用開始に向けて同社や坂城町、学識経験者らからなる研究会を設置。機器の設置費用や回線使用料の負担分担、見守り対象者の範囲、支援体制、事業の評価方法など実用化にあたっての課題について検討を進めている。

 同町によると3月末現在、65歳以上の単身世帯は全世帯の15・7%にあたる953世帯、75歳以上だけの高齢者世帯も288世帯があり、増加傾向をたどる。

 山村弘町長は「当面は200~300人程度で運用したい。将来的に若者世帯も含めた全世帯に広げ、町民みんながつながり、安心して暮らせるまちづくりを進めたい」と語る。

 研究会の会長に就任した石井晴夫東洋大経営学部教授は「水道事業者、自治体が一体となって装置の普及、運用を行うことで利用者側の負担は大幅に低減できる。事業者、自治体の役割分担や普及の仕組みなどが確定できれば、初の画期的なシステムとなり、長野県モデルとして国内外に発信できる」と評価する。県企業局は「高齢者のプライバシーを守りながらすぐに安全確保に動き出せる」と効果に期待を寄せる。