News Up 水道で異変を検知 広がる見守りサービス
2016年7月13日NHK
1人暮らしのお年寄りが増えるなか、孤独死や思わぬ犯罪に巻き込まれるケースがあとを絶ちません。ネット上には、東京・目黒区で88歳の女性の遺体が公園に遺棄された事件などを受けて、「こんな事件が起こると1人暮らしの方が心配。でも、町内のほとんどが1人暮らしのお年寄り」、「独居老人が多いのでご近所の声かけは必要」といった声も上がっています。こうしたなか、生活に欠かせない水道やガス、そして街なかの防犯カメラなどを活用して、1人暮らしのお年寄りなどの安全を見守ろうという自治体のサービスが広がっています。
生活に欠かせない「水道」で見守り
長野県北部の坂城町。人口はおよそ1万5000人。なかでも、65歳以上の高齢者が1人暮らしをする世帯は、ことし3月末時点で15.7%を占めています。地域のつながりが次第に希薄になるなかで、1人暮らしの高齢者の安全確保が課題となっています。こうしたなか、各世帯に水道を供給する長野県企業局と町は、水道を活用して1人暮らしのお年寄りの安否を確認するサービスの実証実験を、来年度行うことにしました。
水の「量」で異変を把握
水道を活用して、お年寄りの安否をどのように確認するのか。カギは、水道の「使用量」にあります。水道を使用する時間や量から、異変の兆候を見つけます。水道に設置した独自のメーターからの情報を、携帯電話の回線を使い東京にあるサーバーに送ります。例えば、一定の時間全く水道が使われないとか、水が流れっぱなしの状態が続いている場合には、異変を知らせるメールが、離れて暮らす家族や近所の知人などに送られます。
坂城町の担当者は「自分から情報を発信するということが難しい1人暮らしのお年寄りでも、メーターを通じて異変を知らせることができる。みんなが安心して暮らせるまちづくりに役立てられれば」と話しています。
防犯カメラで居場所を確認
また、通信機能を持った防犯カメラを活用してお年寄りや子どもの見守りサービスを行っている自治体もあります。
兵庫県伊丹市は、おととし県内で小学生の女児が殺害された事件をきっかけに、約200台の防犯カメラを設置しました。カメラのそばを発信器を持ったお年寄りや子どもが通ると、家族などが、その場所と時刻をパソコンや携帯端末で確認できます。このサービスには、現在200人ほどのお年寄りや子どもが登録しています。
伊丹市では今後、この機能を持った防犯カメラを1000台にまで増やし、サービス範囲を拡大したいとしています。
伊丹市の担当者は「万が一、子どもがトラブルに巻き込まれたりしても、いち早く場所を把握して解決につなげることができたり、認知症のお年寄りの居場所を確認したりできる。特に、認知症のお年寄りの場合は、遠くに行ってしまう可能性もあるので、伊丹市だけではなく、周りの自治体にも広げていきたい」と話しています。
有用だが個人情報取り扱いに注意を
こうした、通信を活用した見守りサービスの広がりについて、公共経営論が専門の東洋大学の石井晴夫教授は「通信を活用したサービスは大変有用だ。一刻を争うような時に手助けになるのは、遠くに住んでいる親族より近くにいる人だ。危機的な状況をいち早く周囲に知らせ、状況を知った人が助けるといった共助の仕組みを作るツールとして、IoTを活用した見守りサービスを普及させるべきだ」と話しています。
また、こうしたサービス利用と個人情報の保護について石井教授は「誰かを助ける時には、その人の住所などの情報が不可欠。見守りサービスを利用するためにはサービスの提供元への情報提供は必須で、だからこそ、情報を管理する側は漏えい防止など保護対策を万全にする必要がある」と話していました。