高齢者の所在、靴で把握 さぬき市で実験 タグとスマホ活用 ボランティア増員が成功の鍵 /香川

2016年6月28日毎日新聞


 認知症のお年寄りに発信器を内蔵した靴を履いてもらい、所在地をスマートフォンで把握する“見守りシステム”の実証実験が今月、さぬき市で始まった。徘徊(はいかい)時などにも身に着けてもらえ、従来品より長期間バッテリーが持つのが特徴。高齢者の行方不明事案も増える中、対策の一つとして成果が注目される。【岩崎邦宏】

 システムは、近距離無線通信「ブルートゥース」とスマホを活用する。発信器を身に着けたお年寄りが近くを通ると、専用アプリを入れた「見守りボランティア」のスマホが位置情報を取得。お年寄りの家族らのスマホに通知され、捜索に役立てる仕組みだ。警備会社「ALSOK」(東京)が開発し、靴は介護靴メーカー「徳武産業」(さぬき市)が作った。来年3月までALSOKが主体となって実験する。

 発信器はタグ状で縦約3センチ、横約6センチ、重さ14グラム。小型、軽量で靴の甲部分に内蔵する。従来の全地球測位システム(GPS)によるシステムでは、数日使うと充電が必要となったが、タグは1年以上持つ利点がある。ただ、位置情報の精度はやや劣るという。

 実証実験の成否の鍵を握るのは、システムに協力してくれる見守りボランティアをどこまで増やせるかだ。現在約100人いるが、ALSOKは500人規模まで拡大しようと同社社員やさぬき市、地元自治会などに協力を呼びかけている。

 ALSOKは市内の高齢者施設や一般家庭向けに説明会を開いており、タグが入った靴やタグ自体を認知症のお年寄り10人ほどに配布した。50人まで増やし、将来的には全国に広げていきたいとしている。

 さぬき市介護保険課は「電池の寿命が長く、うまくいけば一つの良い手段になる」と期待している。

 タグとスマートフォンを活用して行方不明者を捜す同様の取り組みは各地で始まっている。

 京都府長岡京市は今年2月にシステムを導入した。タグを持つ高齢者は約60人(今月20日現在)で、さらに約40人分の利用申し込みがあったという。見守りボランティアとして約300人(同)がスマホの専用アプリを入れており、市の担当者は「イベントなどで呼びかけ、協力者をもっと増やしていきたい」と話している。

 北九州市では今年9月まで実証実験が続いている。模擬訓練が2月にあり、行方不明者役6人のうち、タグを持った4人は23~35分で見つかり、タグを持たなかった2人の35~59分を上回った。

 システム開発に携わったIT企業「スキード」(東京)の担当者は「一定の効果はあった。タグの位置情報の精度を上げ、他の自治体にも広げていきたい」と語る。