スマホ無料配布も社会実験参加37% 下仁田町「困った」

2016年5月29日上毛新聞


 住民の安否確認や健康増進に役立てるため、スマートフォン(スマホ)の全戸配布を検討する群馬県下仁田町が3月末から行っている実証実験が思うように進んでいない。当初の参加者は想定の4割弱にとどまり、日常生活でスマホを携帯していない事例もあるなど住民の関心は低いようだ。町は実験への参加とスマホ携帯を呼び掛けるなど、対応に苦慮している。

 実証実験では同町青倉地区の高齢者の独り暮らし世帯と高齢者同士の2人暮らし世帯を対象に195台を配布する予定だった。本体料金はもちろん、通信料なども無料だが、実験開始時の受け取りは72台(37%)と低調だった。一度は受け取ったが、なじめずに返却に来た人もいた。

 実験に参加していない独り暮らしの女性(86)は長野県内で暮らす娘と頻繁に連絡を取り合っているとし、「生活に必要なことは足りている。独居も不安に思っていない」と不参加の理由を話した。

 スマホは約180グラム、縦15センチ、横7センチで、ストラップが取り付けられない構造だ。ある男性(88)は町からスマホを受け取ったものの、日常的に使うのは長男の妻から贈られた、機能が通話やメールなどに限られる「ガラケー」という。スマホは小まめな充電が面倒だとし、「首にも掛けられないから畑仕事の時は家に置いている」と実情を明かした。

 実験は、使用上の課題や要望について住民から意見を聞いたり、スマホに搭載した町専用のアプリケーションが有効に機能するかを検証するのが狙い。町側は全戸配布の実現が可能か感触をつかもうとしたが、住民側の反応はいまひとつのようだ。

 町職員は、スマホに内蔵された歩数計を利用する講習会や、安否確認の訓練を行うなどして便利さをアピール、「持ってもらうことが第一歩」と普及に力を入れている。

 実証実験は6月末まで。期間中は自治体向けスマホ販売企画会社「ふるさとスマホ」が町内の商店内に相談窓口を開設する。窓口担当者によると、実験開始当初は、基本的操作や見知らぬ画面になったなどの相談があったが、徐々に減っているという。

 高齢者のほか、有事の際に高齢者らの安否確認をする民生委員や消防団員、町職員、町議会議員らにも計168台を配布して使い勝手を確認している。