都市が老いる:孤独死防げ 見守り、サロンやアプリで

2016年5月20日朝日新聞


 埼玉県三郷市の「みさと団地」の一角に、高齢者が交流できる場「ほっとサロン・いきいき」がオープンしたのはちょうど4年前のことだ。

 全国有数のマンモス団地。第2次ベビーブームまっただ中の1973年に入居が始まり、市などによると、団地の高齢化率は35.3%(昨年10月時点)。一人暮らしの高齢者は約800人に上るとされる。サロンは孤立させない、孤独死させないための試みだ。

 サロンを訪ねると、住民が机を囲んで思い思いにおしゃべりや将棋を楽しんでいた。横田和征さん(74)は、母を亡くしてから一人暮らし。「家にいてもおもしろくない。ここに来ると張り合いになる」と毎日顔を出す。1日の利用者は40人ほどだ。

 地域住民の活動も活発だ。13年に住民らが設立したNPO法人「いきいきネット」は、市からサロンの業務の一部を受託。「勝手に見守隊」と称し、洗濯物が干しっぱなしになっていないかなどに常時目配りしている。1回500円のワンコインで買い物やごみ出しなどを行う生活支援サービスも提供している。

 代表理事の海瀬正一さん(76)は「見守り、支えることで、孤独死から助けられるかもしれない。継続的に活動していきたい」。

 見守りの担い手は地域だけではない。離れた場所にいても家族が高齢者の様子を確認できるよう、センサーや携帯電話を使って見守りや安否確認サービスを提供する業者も増えてきた。
 さいたま市のベンチャー「リバティ・イノベーション」は昨年7月から、スマートフォン用アプリ「みまサポ」を提供。高齢者が自身の体調や活動記録を書き込み、家族らが確認できる仕組み。認知症予防の効果も期待できるという。

 「病院の検査の結果が悪かった」「友達とお茶をした」――。まるで、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。希望すれば利用する他の高齢者の書き込みを見ることもできる。24時間更新がないと「何かありましたか」と自動音声が流れ、さらに応答がないと家族に連絡がいく。利用料は当面、無料という。

 森俊明社長(45)は「周りに心配をかけたくない、と言う高齢者は多い。用事がないのに電話をするのはお互いに気が引けても、アプリならちょっとした変化でも伝えられる。高齢者が家族や地域とつながる手伝いをしていきたい」。いつか訪れる日のために。

■高齢者の見守りチェックポイント(「あんしんネット」による)

・服装が汚い、臭い。夏も冬も同じ服を着ている
・表情が硬く、あいさつをしなくなった
・室内のカーテンがいつも閉め切られている
・ゴミや新聞、郵便物がたまっている
認知症孤独死の可能性も。情報提供を