一人暮らし高齢者 配食で見守ります 金沢の会社がシステム開発

2016年5月02日中日新聞


 一人暮らしのお年寄りが増える中、金沢市弥勒町の配食サービス会社「リジョイスカンパニー」が、弁当配達時にお年寄りの安否情報を離れて暮らす家族にメールで知らせている。緊急時に連絡する業者はいるが、異常がなくてもメールでその都度伝えるのは全国でも珍しいという。年内にもシステムを販売する予定だ。

 「ごめんくださーい」。四月中旬、ジャンパー姿の赤井純一社長(46)が声を掛けると、高齢の女性が膝をかばいながら出迎えた。弁当を渡し、受け取りのはんこを押しながら「お変わりないですか」とにこやかに尋ねる。一、二分のやりとりで女性の顔色や表情をすばやくチェック。そしてタブレット端末を取り出し、画面に触れる。これで利用者の状況が家族に送られた。

 端末には自社開発したシステム「み・まもーれ」が入っている。画面に配達の経路順に利用者の名前が並び、利用者名に触れると、利用者や家族の連絡先、食材の注意点が書かれた画面に移る。次に安否を問う画面が現れ、弁当を手渡した場合は「安否を確認できました」、会えずに弁当を置いてきた場合は「確認できませんでした」の項目をタッチ。すると、その内容が家族にメールされる仕組みだ。

 会社を立ち上げて六年。配達中に熱中症や病気で亡くなっているお年寄り七人を見つけた。見守りが必要と感じ、システムを開発した。多くの利用者は何かトラブルがあっても「大丈夫」としか言わない。亡くなったうちの五人もそうだった。だから対面での安否確認にこだわる。

 四年前にシステムを導入。会員は金沢市と市近郊の約三百人で、システムの利用者は年々増えて約三十人。システムの特許を出願した。従業員は十人で、弁当工場が石川県津幡町にある。

 東京都品川区に住む女性(70)は、金沢市で一人で暮らす百一歳の母親の栄養の偏りや火の始末を心配し、サービスを利用している。「メールが来るので、母が起きているタイミングで毎日電話できる。助かってます」と喜ぶ。認知症の義母の世話をする同県内灘町の女性(55)も「食べたことを忘れ、『弁当が来ていない』と電話をかけてきても『配達されているよ』と確実に言えて安心した」と話す。

 システムの販売は個人情報の管理など機能を充実させてからという。赤井さんは「緊急事態に陥らないよう前兆を見逃さないようにしたい。ほかの業者に呼び掛け、見守りの輪を広げたい」と話している。