ビーコン活用、広がる

2016年4月07日読売新聞


 一定範囲に信号を発信し、位置情報の特定などに役立つ「ビーコン」を活用する新たな取り組みが広がっている。横浜市金沢区は、ビーコンを設置した施設に近づくと、スマートフォンに施設情報を自動通知するサービスを開始。民間でも、子供や高齢者の「見守りサービス」への運用が検討されている。(加藤高明)

 ビーコンは従来、冬山の登山者らが携帯し、雪崩事故に遭った際の位置特定などに活用されてきた。最近は性能の向上に加え、価格の低下や、信号を受信できる無線通信機能付きのスマホなどが普及したことがあり、新たな活用方法が検討されるようになった。

 同区では、子育て支援に協力する区内の店舗や施設計27か所にビーコンを設置。設置店舗・施設の5~30メートル圏内に入ると、スマホやタブレット端末が信号を受信し、授乳スペースや子供用トイレの有無といった店側の情報が自動通知されるサービスを始めた。通知は、無線通信機能があるスマホなどに専用アプリをインストールすれば受けられる。

 同区地域振興課は「ビーコンは1個2000円程度の低価格で設置が可能。利用状況を検証したうえで、設置場所を増やすことも検討したい」としている。

 一方、東京電力やソフトバンク、NPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」などでつくる「地域課題解決型インフラサービス開発検討委員会」は今年2月から1か月間、横浜市中区の小学校で、ビーコンを使った児童の見守りサービスの実証実験を行った。

 小学校を中心に約1.7キロ圏内の電柱100基に、信号の受信機を設置。500円玉サイズのビーコンを身につけた児童が電柱の近くを通ると、保護者にメールで通知される。GPS(全地球測位システム)機能がない携帯電話でも、子供の現在地が把握でき、同じ仕組みで、認知症の高齢者の居場所を確認することも可能だ。

 検討委は、今後もサービスの実用化に向けた実証実験を続けていく方針で、同NPOは「見守りサービス以外のビーコンの有効活用策も検討したい」としている。

 ビーコンを活用した見守りサービスでは、JR西日本とIT関連企業「HAMOLO」(東京都新宿区)が3月から沿線駅で事業を開始。JR神戸線や京都線の駅を中心に受信機の設置を増やしており、同社の担当者は「徐々に利用者も増えている。今後は個人だけでなく、高齢者施設などへのサービス提供もできれば」と話している。

〈ビーコン〉無線技術を活用した小型の信号発信装置。信号の受信機とセットで活用することで、ビーコンを持った人の位置情報を把握できる。店舗や施設にビーコンを設置すれば、信号をキャッチしたスマートフォンに商品や施設の情報を自動通知することもできる。