認知症見守りに小型端末、靴・杖に装着 ALSOK
2016年4月05日日経新聞
綜合警備保障(ALSOK)は、徘徊(はいかい)する認知症高齢者の居場所を見つける小型の発信端末を開発した。省電力の無線通信を使いスマートフォン(スマホ)で位置情報を捉える。従来のシステムに比べ端末価格を約10分の1に引き下げ、毎月の利用料金も抑える。自治体と連携して3年で500市町村での導入をめざす。
端末サイズは縦3センチ、横5.6センチ、厚さ1.1センチでボタン電池で動く。重さは14グラムで電池は1年以上交換せずに済む。近距離無線通信規格のブルートゥース・ロー・エナジー(BLE)を使う。
端末は衣服に縫い付けたり、お守り袋に入れて杖(つえ)に結びつけたりできる。介護用靴大手の徳武産業(香川県さぬき市)と協力して専用の靴も開発した。靴ひも代わりのテープ部分に端末をさし込んで使う。
価格は1台2千円程度を見込む。毎月の利用料は200~300円にする方針だ。ALSOKの全地球測位システム(GPS)を使う従来式は、端末価格が税別2万1500円。月の利用料が同1100円だった。価格を抑えて普及を図る。
端末は半径50~100メートルほどの範囲で電波を常時発信する。街中で専用の無料アプリを入れたスマホやタブレット(多機能携帯端末)が高齢者とすれ違うと検知する。受信した位置情報はALSOKに自動で送信し、サーバーに高齢者の移動の履歴を匿名で蓄積する。
高齢者を捜す家族が、アプリに服装などの特徴を書き込むとALSOKが承諾を得た協力者に伝え、周囲を確認してもらうこともできる。
居場所を確認する精度を高めるには、一定数以上のアプリを持つ協力者が必要になる。近隣住民や医療・介護、行政関係者のほか、宅配事業者などを想定する。
今月から香川県で実証実験を開始。高齢者の見守りに力を入れる全国の自治体と協力し、年内に本格的にサービスを始める計画だ。
見守りサービス向けの端末はGPSが主流だったが、大きさや重さ、充電の手間を敬遠する高齢者も多かった。このため最近は端末を軽く小型化しやすいBLEを使う方式が普及しつつある。
JR西日本とHAMOLO(東京・新宿)もBLEによる見守りサービスを3月から開始。NTT東日本も地方で実証実験した。BLEは雨天時に電波が減衰しやすい弱点がある。ALSOKはアンテナと電池を離すなどの工夫で予防する。
厚生労働省の推計では認知症の高齢者は2025年には約700万人に達する見通し。徘徊で行方不明になったり、事故に遭ったりする人が増えており、家族や施設の見守り負担の軽減が社会的な課題となっている。