スマートフォン 高齢者に配布し実証実験 群馬・下仁田

2016年3月27日毎日新聞


 群馬県下仁田町は26日、高齢者の地域見守り活動や防災・緊急時の行政情報連絡手段としてスマートフォンを活用する実証事業を青倉地区を対象に始めた。1人暮らしや高齢夫婦世帯などに計285台の端末を配布。アプリケーションが有効かどうかなどを6月30日まで約3カ月間かけて明らかにし、将来はスマホを全戸配布する方針だ。【畑広志】

 端末を受け取った農業、青木昌平さん(82)は「携帯電話は持っていないし、スマホも初めて。体の具合が悪くなってどこかで倒れたときに、スマホを持っていると場所が分かるというので、これが欲しいとみんなが考えている」と話した。

 町健康課によると、2014年2月の大雪では孤立世帯が出た。町道の除雪が大幅に遅れたため、民生委員が1人暮らしや高齢夫婦宅を尋ねる安否確認に24時間以上もかかってしまった。電源が必要な電話機が停電で使用不能になり、電話連絡もつかなかった。

 町内には山間部が多く、防災無線が聞こえない所や大雨などで聞こえにくくなったりして緊急時の情報伝達に不安がある。かつてケーブルテレビが計画されたが頓挫した。昨年11月、全国から61の自治体が参加する「自治体スマホ連絡協議会」が発足。スマホを活用して高齢者の見守りや地域の安全活動などに取り組み、下仁田町も加入した。

 町の人口は昨年10月1日現在で8188人。高齢化率は43・73%。スマホのGPS(全地球測位システム)による位置情報を知ることで、認知症の徘徊(はいかい)把握に期待できるという。アプリの避難情報には「今すぐ助けがほしい」「安全です」「避難した」の連絡をワンタッチでできる機能を備えた。

 2月中旬にスマホ教室があり、基本的な使い方や電話の使用法などを青倉地区の113人が学んだ。配布する端末は、1人暮らし79台▽高齢夫婦世帯116台▽民生委員と消防団員90台。事業終了後にアンケート調査を実施する計画だ。