病院のトイレでの卒倒、素早く検知・通報します! 慶大発のベンチャーがシステム開発

2016年3月01日日刊工業新聞


 慶応義塾大学発ベンチャーのイデアクエスト(東京都大田区)は、トイレでの卒倒などを早期に検知、通報するシステムの試作品を完成させた。赤外線の輝点画像から人の姿勢を把握し、危険な状態かどうかを人工知能(AI)で判断する。高齢者施設や病院の個室での異常発生を想定した「見守りシステム」としての利用を見込む。2016年中に実用化する計画だ。

 開発したシステムは赤外線半導体レーザーとファイバーグレーティング素子を使い、格子点に並べた約2000個の赤外線輝点をトイレの室内全体に投影する。さらに、これとは別に室内に設置した撮像素子で撮影する。人がいる時といない時の輝点位置を比較しながら、人の姿勢を3次元の画像で再構築する。

 安否の確認には、AI技術の一つで、脳の神経回路の仕組みをモデルにした情報システム「ニューラルネットワーク」を活用する。あらかじめ安全な姿勢と危険な姿勢を学習させておいたAIに撮影したデータを入力する。AIが対象者について危険な状態だと判断した場合、家族や施設管理者のパソコンやスマートフォンなどに通知する仕組みだ。

 病院や介護施設のトイレでは、高齢者や病人が意識を失って倒れたり、座ったまま眠ってしまうといった異常が発生しやすいが、個室内の出来事のため周囲の人は気づきにくい。

 また、個室内の様子をカメラで撮影することは、プライバシー侵害の問題もあるため難しい。写真ではなく輝点を再構築した画像であれば、対象者のプライバシー保護できると判断。AIが10分程度の学習で正しく判断できるアルゴリズムを開発し、レーザーや撮像素子などと組み合わせたシステムとして完成させた。