「買い物弱者」を救え、移動スーパー拡大…高齢者の「見守り」にも効果

2016年12月30日日産経WEST

 
 食料品や日用品を専用車両に積み込んで販売する移動スーパーが全国で拡大している。郊外や過疎地域で店舗が減り「買い物弱者」と呼ばれる高齢者らが増えているためだ。移動販売の需要は、今後も大きくなるとみられ、生協やスーパー、コンビニエンスストアがこぞって事業を強化している。(藤谷茂樹)

地元自治会が要望

 大阪府泉佐野市の府営鶴原中央住宅では水曜午後、「大阪いずみ市民生活協同組合」(いずみ生協、堺市堺区)の移動販売車が乗り付ける。扱う商品は食料品や総菜、調味料など800品目。仏壇に供える花なども取りそろえている。

 このエリアでの移動販売は今年7月から始め、毎週20人ほどの利用があるという。コメなどを買い、手押し車に入れた女性(70)は「重い物も買えて助かっている」と話した。

 高度成長期にあった昭和45年に入居が始まった同住宅では、住民が高齢化。独居する65歳以上の高齢者は157世帯と、全世帯の3分の1を超えた。南海本線鶴原駅に徒歩5分ほどと近いが、周辺の商店は減り、数年前にスーパーも撤退した。

 足腰が弱った高齢者が買い物に困るなか、地元の自治会や福祉協議会が、平成24年から移動スーパーを始めたいずみ生協に協力を要望し、実現したという。

中小スーパー、コンビニも

 いずみ生協は移動販売車3台を府内11市町村の150カ所以上の場所で展開。採算をとるには、1カ所あたり売り上げが1万円程度が必要だが、担当者は「高齢者が集まることで、見守り活動になり好評だ。継続には地域との連携が必要」と話した。

 移動スーパーの運営専門会社「とくし丸」(徳島市)と提携して、移動販売を始める中小スーパーも出てきた。同社からのノウハウの提供を受けて、関西では昨年9月にJA紀州(和歌山県御坊市)、今年8月にトップワールド(大阪府寝屋川市)などが展開。とくし丸は平成24年の創業だが、今では35都道府県で190台(12月時点)の移動販売車を走らせている。

 移動スーパーは、流通大手やコンビニも拡大。イオンは青森、宮城、岩手、千葉、山口の5県、イトーヨーカドーも北海道や長野県、岩手、福島、東京5道都県で展開する。

 ローソンは19都道府県の約50店が移動販売や高齢者施設などでの出張販売を実施。移動販売車は来年4月までに2台から16台まで増やす計画という。

 経済産業省の推計では、国内の買い物弱者は700万人。今後も移動スーパーのニーズは高まりそうだ。