民生委員が各地で不足 30府県で80歳以上が担い手
2016年12月12日NHK
独り暮らしの高齢者の見守りなど地域の福祉を担う民生委員が各地で不足する中、少なくとも30の府県で80歳以上の高齢の人が民生委員を務めていることがわかりました。国は75歳未満の人を選ぶことを努力目標としていますが、各地で欠員が出る中で、高齢の委員にも頼らざるをえない実態が浮き彫りになりました。
民生委員は、厚生労働大臣が委嘱する非常勤の地方公務員で、独り暮らしの高齢者や生活保護世帯といった住民の相談に乗り必要な行政サービスにつなげるなど、ボランティアで地域の福祉を担っています。
今月1日に3年ごとの改選を迎えたことを受け、NHKが各都道府県と政令指定都市、それに中核市に取材したところ、1日の時点で全国で8724人の欠員が出ていることが明らかになりました。
また、民生委員の最高齢を尋ねたところ、分かっているところだけで30の府県に80歳以上の高齢の人がいることがわかりました。このうち6つの県では85歳以上となっていて、確認できた中での最高齢は熊本県の88歳でした。
厚生労働省は「将来にわたって積極的な活動が行えるよう75歳未満の人を選ぶよう努めること」としながらも、地域の実情を踏まえた弾力的な運用を認めていて、欠員が増える中で、自治体が高齢の委員にも頼らざるをえない実態が浮き彫りとなっています。
地域福祉を支える民生委員
民生委員は、非常勤の特別職の地方公務員ですが、ボランティアという位置づけです。独り暮らしの高齢者や父子家庭、母子家庭などを訪問して相談に乗ったり、福祉の窓口を紹介しています。また、災害時の避難の助けが必要な人の情報を把握するなど年々役割は増えています。
東日本大震災の津波で被害を受けた宮城県気仙沼市の民生委員、齋藤正男さん(77)は仮設住宅で暮らしながら、各地にバラバラになったおよそ200世帯の見守りをほかの2人と担当しています。
齋藤さんは、「私も高齢になり、自宅で暮らしたいのですが、誰にも相談できない方々が最後に連絡するのが民生委員だと思うので、残された人が心配で辞めることができません」と話していました。