【シングル時代】 孤独感や不安の解消には? 見守りサービスなど確認を

2016年12月09日産経新聞

 
 高齢者の単身世帯が増えている。配偶者と死別したり、離婚したりして「1人の老後」に悩む人は少なくない。孤独感や不安を解消するにはどうしたらいいのだろうか。

                   
 ◆頼ることに不安

 「体調を崩したとき、不安が一気に大きくなる」

 東京都板橋区の無職の男性(70)は、同い年の妻と離婚した6年前から木造アパートで1人暮らしだ。子供はおらず、付き合いのある親族といえば長野県に暮らす40代のおいやめいだけ。「体の自由が利くうちに、成年後見人などの手続きをお願いできたらと思うけれど、面倒をかけて親戚付き合いを壊したくないという迷いもある…」と胸中は複雑だ。

 高齢化や核家族化の進展に伴い、男性のような1人暮らしの高齢者は増加の一途をたどっている。内閣府の「平成28年版高齢社会白書」によると、26年に65歳以上の高齢者全体に占める単身世帯の割合は17・4%。昭和55年の8・5%に比べ8・9ポイント増加している。老後の1人暮らしは、誰にとっても身近になりつつある。

 ◆情報集めが鍵

 高齢シングルが安心して余生を過ごせるかどうかの鍵を握るのは、周到な備えだ。
 1人暮らしの不安や悩みを解消する活動を行う市民団体「単身けん」(東京都世田谷区)の石川由紀事務局長は、「1人暮らしの高齢者向けのサービスは充実してきている。使える情報をどれだけ集められるかが勝負」と強調する。

 まず心配なのは体調の急変だ。民間の見守りサービスに登録したり、健康診断をこまめに受けて健康管理に努めたり、もしものときに備えたい。

 どのようなサービスがあるのかを調べ、リストアップしておくことも大切だ。行政の各種相談窓口や高齢者向けの食事の宅配、掃除代行など必要な事項を書き出し、まとめておこう。

 「介護はまだ先のこと」などと考えていてはいけない。突然、体の自由が利かなくなることもあるからだ。親族に迷惑をかけないよう、介護保険や各種サービスの使い方を事前に確認しておく。また、高齢者施設に入居する費用を用意したうえで、希望を周囲に伝えておくとよい。

 石川さんは「経済的なことや介護の希望などは文書に記しておく。事前に頼みやすい親族や知人に託しておくと混乱や負担が少ない」とアドバイスする。

◆地域に人間関係を

 現在、家族とともに暮らしている人こそ危機意識を持ちたい。突然配偶者を亡くし、「どうしたらいいのか分からない」と困る人が少なくないからだ。

 石川さんは「夫婦で暮らしていても1人の時間を持つようにしたり、行きつけの店や習い事に通い始めたりして、ちょっとした異変に気付いてもらえるような人間関係を作っておくとよい」と話している。

                   

 ■生涯未婚率は男性で20.1%、女性は10.6%

 未婚者の割合が増加していることも高齢シングルが増えている要因の一つだ。国立社会保障・人口問題研究所の平成28年版「人口統計資料集」によると、50歳時点での婚姻歴がない人を指す「生涯未婚率」(22年)は、男性20.1%、女性10.6%で男女ともに過去最高となった。今後も増加が予想されており、20年後の65歳以上の未婚者数は男性が2.6倍、女性は2倍以上に増えると推定される。

 高齢者の社会保障に詳しいみずほ情報総研の藤森克彦主席研究員は「未婚で1人暮らしの高齢者は親族に頼るのが難しい。孤立を防ぐため、地域での居場所作りなどを支援する取り組みが必要」としている。