高齢者見守り テレビで

2016年12月06日読売新聞

 
 津和野町とシャープ(本社・堺市)は6日から来年2月末まで、同町で高齢者の見守りや生活支援を行う実証実験を行う。安否確認のためにテレビの電源の操作状況を親族らにメールで知らせるほか、テレビを見ながら買い物の注文ができるシステムを導入。実験結果を検証し、町は2017年度中に町内全域での導入を目指す。

 津和野町は65歳以上の割合が45・9%(11月末現在)で、高齢者の健康や自立した生活の維持が課題になっている。そこで、過疎化などの課題を抱える地方自治体に大企業の社員を出向させて課題の解決にあたらせる総務省の「地域おこし企業人交流プログラム」を活用。昨年11月に同社の社員2人を受け入れ、高齢者らの見守り活動や買い物支援に向けたシステム作りを進めてきた。

 対象は、町内の高齢の独居か、夫婦を中心とした50世帯。見守り活動は、今年9月に先行して導入した。インターネットを介し、テレビの電源操作の情報を同社のコンピューターのサーバーで把握。テレビの電源を入れた際や長時間にわたって操作していない場合、自動的に親族らにメールで知らせる。毎日、安否確認の電話をしていた親族が、これを利用することで頻度を減らせたという。

 買い物支援にもテレビを活用する。テレビの入力を「買い物支援」に切り替えると、画面に町役場の地域活動支援室のオペレーターが映し出される。利用者は手元や画面のカタログを見て、会話をしながら発注できる仕組みだ。同室の担当者が町内で買い出しをして、翌日に宅配業者が代金引き換えで自宅へ届ける。

 実験では、テレビを通じたシステムの動作を確認するとともに、買い物できる商品の品ぞろえや配達にかかるコストの軽減方法などを探る。
 このほか、火や水を使わずに調理できる同社の電気鍋「ヘルシオホットクック」を高齢者世帯に配り、食生活の支援に役立てるとしている。
 町内では、店舗が減るとともに移動販売も減る傾向にあり、住民団体が買い物ツアーを組んだり、コストを理由に商品を店舗に配達できない卸業者に代わって運搬を代行したりしている。
 同町つわの暮らし推進課の内藤雅義課長は「買い物弱者や独居の高齢者の安否確認が課題となっており、解決の手法の一つとして期待している」と話す。
 シャープ側は「津和野町の事例で改善点を検証し、同様の課題を抱える自治体にシステムの採用を働きかけたい」としている。