【介護離職に備えよ】デジタルで簡単・快適な安否確認 まずは一歩踏み出すこと

2016年11月25日zakzak

 
 離れた故郷で高齢の親だけが暮らしているという状況は、いまや珍しくない。65歳以上の高齢者世帯は増え続け、2013年時点で2242万世帯と全世帯(5011万世帯)の44・7%を占めている。また、「夫婦と子供」という典型的な核家族は1995年以降減少に転じ、2010年には世帯数1位の座を「単独世帯」に明け渡した。今後も減少の動きは止まらず、50年にはピーク時の半分以下になると推計されている。

 故郷の親が1人暮らしになり、漠然とした不安を持つ子世代は多い。特に、助けてくれる家族が周りにいないことへの不安は強い。そのニーズを見越した「見守り・安否確認サービス」にはさまざまなものがあるが、なかなか軌道に乗っていないのが実情だ。

 そこで私は最近、「YDK」という考えを提唱している。

 「やってみれば(Y)、デジタル(D)、簡単・快適(K)」という言葉遊びだが、デジタル機器を使って親とのコミュニケーションを積極的に取り、お互いの意思疎通や安否確認につなげようというものだ。スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器は「ウチの親には扱えない」と思い込んでいる人も多いだろうが、70代、80代でスマホデビューして使いこなしている親世代も少なくない。

 東京在住のSさん(50代)は、宮城県に住む70代の母親が一人暮らしになったのを機に、スマホをプレゼントした。デジタル機器でつながりをもち、孤立させないこと、頭を活性化させること、安否を見守ることが目的だ。それまで母親はガラケーを使う程度で、スマホに触ったこともなかったのだが、Sさんはきょうだい2人を巻き込み、LINEを開始した。

 そのうちに、母親は毎朝「おはよう」と送ってくるようになり、きょうだい同士も連絡を取り合うようになった。母親も、「今日は美術館に行きました」など積極的に外出して画像を送ってくるようになったという。「期待した以上にLINEが張り合いになっている様子。私たちと毎日やり取りしているので、オレオレ詐欺にも遭わないでしょう。母がこんなにスマホを使うようになるとは意外でした」とSさんは言う。

 「ウチの親にデジタル機器なんて無理」と諦めずに、まずは一歩踏み出すことで、それほど費用をかけずに親子のコミュニケーションや安否確認ができるようになるのではないだろうか。

 ■大澤尚宏(おおさわ・たかひろ) オヤノコトネット(www.oyanokoto.net)代表取締役。1995年に日本初の本格的バリアフリー生活情報誌を創刊。2008年、「そろそろ親のこと」(商標登録)をブランドにオヤノコトネットを創業し、「高齢期の親と家族」に関わるセミナー講師や企業のマーケティングアドバイザーとして活躍している。