水道利用状況で安否確認 来秋から坂城で実証実験

2016年11月23日信濃毎日新聞

 
 水道の利用状況で1人暮らしの高齢者の安否を確認する仕組みを識者や業者などと検討している県企業局の研究会は22日、県庁で開いた会合で、来年9月をめどに埴科郡坂城町の約100世帯を対象に実証実験を始めると決めた。県内の高齢化率(65歳以上人口の総人口に占める割合)が2015年国勢調査で初めて30%を超えたことも踏まえ、企業局は「異変をいち早く察知し、高齢者が安心して暮らせる仕組みにつなげたい」としている。

 「高齢者元気応援システム―KIZUKI」と名付けたこの仕組みは、研究会メンバーの東洋計器(松本市)などが開発。対象の世帯に電子式水道メーターと通信装置を付け、同社の受信センターと回線でつなぐ。対象の高齢者が朝に水道を使い始めると、あらかじめ登録した家族やボランティアらにメールが配信され、無事を伝える。

 一方、高齢者が水道を長時間にわたり使わなかったり、流したままになったりしている場合も家族らに知らせ、異変に早期に対応できるようにする。

 坂城町は企業局による水道事業の給水エリア。町の独居老人台帳登録者から意向調査で100世帯程度を選び、仕組みを導入する。実証実験期間は19年度末までの約1年半で、実験開始後は町が利用者や家族らにアンケートを行い、他市町村にも仕組みを広げられるか検討する。

 電子式水道メーターの設置費(1世帯当たり約2万5千円)は企業局が、通信装置のリース料(1カ月1250円)は町が負担する。システムの利用料は町か利用者のどちらが負担するか検討を続ける。

 研究会長の石井晴夫・東洋大経営学部教授は、全国の自治体が高齢化に直面する中、こうした仕組みの導入は1人暮らしの高齢者が安心して暮らせる地域づくりにつながると強調。「全国に先駆ける長野モデルとして展開したい」と述べ、国に財政措置を求めていく考えも示した。