高齢者支援に郵便局網 日本郵便・ドコモなど 8社で新会社

2016年11月18日日経新聞

 
 日本郵便は自宅で暮らす高齢者向けの生活支援サービスに参入する。NTTドコモ、セコムなどと新会社をつくり、地域の郵便局員が高齢者宅を訪れて状況を確認するほか、買い物代行や健康管理も担う。政府は介護施設などではなく自宅で暮らす高齢者を増やしたい考え。全国の郵便ネットワークと各社のノウハウを組み合わせ、こうした高齢者を後押しする。

 新会社の資本金は日本郵政グループの日本郵便とかんぽ生命保険が過半を出す。日本IBM、綜合警備保障(ALSOK)、第一生命ホールディングス、電通も出資。8社共同で事業を展開する。過疎地にも拠点を持つ日本郵便と、業界大手が協力して全国規模で高齢者向けサービスを展開するのが大きな特徴だ。

 サービスは来年2月から始める。地域の郵便局員が高齢者の家を月1回訪問。30分ほど会話し、健康状態や生活環境の変化を確認する。高齢者が同意すれば、訪問の結果を家族や医療機関などに知らせる。

 日本IBMは操作が簡単な高齢者向けのタブレット端末を開発。利用者に貸し出し、今回のサービスの窓口にする。タブレットで地域のスーパーや商店街の商品を注文すると、郵便局員が商品をまとめて自宅に届ける。タブレットに日々の健康状態や服薬状況も入力できる。かんぽ生命と第一生命は高齢者のデータに基づいて健康づくりのアドバイスをする。
 サービスを利用する高齢者どうしの交流も促す。会合案内などをタブレット端末で簡単に作成できるようにする。ラジオアプリや簡単なゲーム、カラオケ機能を搭載して娯楽にも使ってもらう。

 高齢者の体調が急変した場合には、警備会社の警備員が24時間対応で自宅に駆けつける。必要があれば救急車を呼び、離れて暮らす家族にも連絡する。
 利用料金は検討中。サービスをどれくらい利用するかにもよるが、月に数千円程度が中心になるとみられる。

 日本郵便など8社がこうしたサービスを始めるのは、高齢者の市場が広がっているためだ。75歳以上の高齢者は2015年に1600万人。30年には2300万人に増える見通しだ。
 厚生労働省は高齢者がなるべく自宅で医療や介護を受けながら過ごせるようにする方針だ。高齢者が急増するなかで医療・介護施設に頼ると、希望者が入りきれなくなるうえ、社会保障費も膨らむためだ。

 介護保険が適用されない生活支援サービスの市場は今後拡大すると見込まれる。富士経済の試算によると、見守りや健康管理など高齢者向けサービスの市場規模は21年に5572億円と16年から30%増えるという。

 日本郵便だけではノウハウの限界があった一方、他社も高齢者向けサービスを行うには地方の拠点が足りない問題があった。相互に補完することで事業化できると判断した。