高齢者配食やむなく縮小 人手不足や経費負担

2016年11月04日河北新報

 
 仙台市泉区を拠点に高齢者向け配食事業を手掛ける認定NPO法人「グループゆう」が今春、人手不足と経費負担増のため、配達個数とエリアを縮小した。受託する「仙台市高齢者食の自立支援サービス事業」の委託料は1食300円で、制度創設以来16年間据え置かれたまま。ボランティアに頼る他の事業者などからは「スタッフの高齢化など悩みは同じ。このままでは地域で支えてきた弁当の宅配維持は難しい」との声が上がる。

 グループゆうは、市から利用認定を受けた65歳以上を主対象に、毎日昼と夕計80~90食を調理、配達してきた。4月から日曜と比較的利用の少ない昼食、遠方の計約40食の提供をやめた。利用者には事情を説明し、別の業者に切り替えてもらったという。

 1995年に主婦十数人で設立し、2000年に法人化、02年から市のサービスを受託する。スタッフ17人はパートと交通費程度を受け取るボランティアで平均年齢は60代半ば。パートの時給は宮城県最低賃金の748円に設定している。

 理事の丸登志子さん(61)は「この待遇では人が集まらない。利用者には申し訳なかったが、事業を続ける上で苦渋の判断だった」と説明する。

 配達のガソリン代、食材費の負担も重くのしかかる。サービスでは弁当の手渡しで利用者の安否確認も担うため、留守の場合には何度も出向くことになる。献立は管理栄養士が、毎食バランスよく考える。野菜など生鮮類の高騰は、円単位のやりくりを直撃する。

 8%への消費税率引き上げのしわ寄せも、業者が負う。委託料の具体的な改定予定はないという。
 仙台市の高齢者向け配食は、ボランティア団体が先駆けて実施し支えてきた。連携組織「食事サービスネットワークみやぎ」に参加する7団体は現在、年間計約14万食を提供する。
 配食事業にも携わる市地域包括支援センター連絡協議会の折腹実己子会長(63)は「担い手が世代交代していかなければ、地域で支え合う仕組みは成り立たない。事業の実情に見合った経費支援も必要」と訴える。

[仙台市高齢者食の自立支援サービス事業]1人暮らしや同居者が入院や病気の高齢者世帯で、体が弱って食事の用意が困難な65歳以上が主な対象。1日1食(昼または夕)週7回まで。2000年度に始まり、現在18事業所が受託。15年度末時点で約1700人が認定を受け、年間約31万食を提供。利用者負担は1食500円で、業者には市から別に300円の委託料が支払われる。