親と自分のこれからの暮らし(4) 世代交流を育む場

2016年10月27日ZAKZAK

 
 高齢者だけの住まいでは、年代の高い人しか関われないと思うかもしれない。だが、世代交流の仕組みがあれば、生きがいができ、視野も広がる可能性もある。

 東京都日野市にある「ゆいま~る多摩平の森」(以下、「森」)は、サービス付き高齢者向け住宅とコミュニティーハウスの2棟から成る賃貸住宅だ。サービス付き高齢者向け住宅は基本的に60歳以上が対象だが、コミュニティーハウスの入居者も実際、60歳以上。2棟で63戸あり、平均年齢82歳の67人が暮らす。最年少は65歳、最年長は97歳だ。

 もともと、築50年以上の団地の5棟を若者向けシェアハウス、ファミリー向け共同住宅と、「森」に改築し、オープンしたのが2011年。5棟の街区は「たまむすびテラス」という名称だ。

 同テラスには多世代が交流できる空間がある。4月に桜まつり、12月には餅つきなど季節の行事を行う。

 「森」のハウス長、清水敦子さんは「ゆるやかにつながろうという意図があり、皆さんが適度な距離を保ちながら暮らしています。昨年の夏には高齢者が学生に語学や編み物を教えるなどして、交流を育んでいます」と話す。

 居住者の関わりは若い世代だけに留まらない。昨年、「森」の入居者同士で助け合う「ちょこっと仕事の会」を立ち上げた。メンバーは10人。1時間500円で、高齢者同士が、通院や散歩の同行、草むしり、パソコンレクチャーなどを行う。

 「森」のフロントでも30分820円で同様のサービスを行うが、「仕事の会」の支え合いにより、お互いの距離が縮まった。

 なかでも、90歳の女性に週2回、話を聞く「傾聴」をすることで、日常の会話が弾むようになった。以前から声がけはしていたが、自然な見守り体制が強まった。普段から温かい雰囲気が漂う。

 清水さんは「みなさん無理なくやっているから続いています。見守り程度であればセンサーなどで対応できますが、負担にならないつながりは大事ではないでしょうか」と語っている。