親と自分のこれからの暮らし(3) 家族のような「共生」

2016年10月20日ZAKZAK


 高齢になってもできるだけ自立はしたい。そんな願いを形にした住まいがある。

 賃貸住宅のCOCO湘南台(神奈川県藤沢市)は、「グループリビング」という住み方だ。これは、主に血縁関係のない高齢者が、自立して家族のように暮らすもの。全国でわかっているだけで17カ所ある。認知症を患った人が中心のグループホームとは全く性質が異なる。

 ここには、病院、周辺のボランティアの人、家事サービスなど多くの支援がある。入居者同士、つながりはあるが干渉しない。「自立と共生」がテーマだ。

 建物はバリアフリー住宅。入居金370万円、生活費が月額13万8000円。それには家賃、昼・夕食、共用部の光熱費などを含む。個室内には洗面、トイレ、ミニキッチン、クローゼット。共用のキッチンやリビング、エレベーターなどもある。居住者は69~89歳の9人。うち男性は1人。

 「自立」を中心に据えているだけあって、各自に役割がある。1日の終わりの見回りや戸締まり、お風呂のお湯はり、共益費の会計など、それぞれで分担している。

 日中は、運営母体のNPO法人に勤務するライフサポーターと呼ばれる担当者が窓口に待機。宅配や電話の取り次ぎなどを行う。だが、夜間は高齢者だけ。緊急時に備えて隣の部屋に連絡するためのベルが各室内に設置されている。

 さらに月1回、居住者が生活上の問題を話し合うミーティングもある。現在、88歳の居住者が司会を務めている。

 過去には、訪問診療などを利用して、話し相手のいる状態でターミナルケアを受けた人がいる。病院で亡くなった人のお葬式をここで行ったこともある。まさに家族のような関係だ。

 住宅を運営するNPO法人COCO湘南で居住者をバックアップする中野満事務局長は「いずれ自分たちも年齢を重ねて同じ状況になる。ここで暮らしたいと思う人の役に立てるように日々、取り組んでいる」と話している。