親と自分のこれからの暮らし(2) ホームシェアで育む絆

2016年10月12日ZAKZAK

 
 誰とどこで暮らすか。他人と一つ屋根の下で、ゆるやかな絆を育む選択肢がある。東京都練馬区の宮本幸一さん(74)は、自宅のひと部屋を、血縁のない学生に提供する。1年単位で、現在は2人目だ。

 これは「世代間交流ホームシェア」という欧米では定着した方法。高齢者と学生がともに自立して暮らし、高齢者の精神面と学生の経済面を安定させるのが狙いだ。

 退職し、子どもも巣立った宮本さんだが、妻が若年性認知症を発症。介護に明け暮れる日々となった。だが3年前、妻は施設に入所し、今年初めには、旅立ってしまう。以前は両親を含めて6人で住んでいた築21年、6LDKの二世帯住宅には1人。空き部屋が目立った。

 もともと、宮本さんは男性介護会の代表やシニアの見守りも務めるなど、社会活動への意識が高い。ホームシェアの橋渡しをするNPO法人リブ&リブの石橋●(=金へんに英)子(ふさこ)さんと出会い、「社会貢献になるなら」と決意。今、2つずつあるキッチンとトイレを学生と分けて暮らす。学生用の個室もある。学生からは光熱費と雑費で月2万円を受け取る。

 同居でも、ほどよい距離感は大切だ。生活ルールはある。各自が専有使用部分を掃除し、学生が遅くなるときは連絡する。生活する上で新たな取り決めもでき、共にしていた朝食を各自別々にしたことも。

 「そのままだと私がストレスになったでしょう。『やってあげている』では続かない」(宮本さん)。

 一方で、得られるものは大きい。

 「学生から『提出するリポートを見てほしい』と言われるので意見を伝えることもある。知らない分野で、勉強になる」

 ホームシェアは利益メーンの賃貸住宅とは異なる。リブ&リブの石橋さんは解説する。

 「事前の顔合わせで相性を確かめ、月1回関係づくりもサポートする。役立つ気持ちが出て、健康寿命も延びる」

 宮本さんは「この夏、同居していた学生が遊びに来てくれて、喜びもひとしお。若い人からもらうエネルギーは大きく、周りからは若返ったとも。今の時間は、まさに妻からの贈り物ですね」と話している。