海外も見守り ベッド上の異変、センサーで感知 急速な高齢化、タイ導入 大分市の会社が開発 /大分

2016年9月20日毎日新聞

 
 大分市のソフトウエア会社「エイビス」が、ベッドの上の要介護者の動きをセンサーで感知して介護・看護スタッフらに知らせ、ベッドからの転落事故を防ぐ「みまもりシステム」を開発し、海外での普及を目指している。国内の病院や介護施設など40カ所で導入され、経済発展とともに高齢化が進む東南アジアに注目。JICA(国際協力機構)の協力で、特に高齢化が急速なタイの病院で実証実験を始め、現地のニーズを探っている。【西嶋正法】

 みまもりシステムは病院などのベッドマットの下に、人の振動と圧力に反応するパネルセンサーを設置。要介護者がベッドを降りたり体を起こしたりする動きや、けいれんなどの異変を感知すると警報やナースコールが鳴る仕組みだ。

 介護施設や病院では入所者らがベッドから転落したり、ベッドを降りて歩行中に転んでけがをしたりする事故が相次いでいる。このシステムを導入することで事故防止や介護スタッフの負担軽減につながるという。

 また、独居の高齢者の在宅介護や看護をサポートするサービスも始めた。人の動きや家のドアの開け閉めなどを感知するセンサーを設置。一定時間、センサーに反応がない場合は、電子メールなどで家族に通知して確認や対応を促す。

 同社は県内や首都圏で普及を図る一方、海外にも目を向け、高齢化の波が押し寄せるタイがまず浮上した。

 JICA九州によると、「人口増加」のイメージが強い東南アジアは、実際には出生率の低下に伴って高齢化が加速。特にタイは、人口に占める65歳以上の高齢化率が2010年の8・9%から、24年には14%を超える見通し。家族中心の介護の仕組みが崩れ、単身の高齢者の増加や介護・看護スタッフの不足が深刻化している。

 エイビスの吉武俊一社長(58)は仕事でタイを訪れ現状を知り、中小企業の海外展開を支援するJICAの事業に応募。今年1月に採択された。7月25日からバンコク市の国立病院が5セットを試験導入しており、秋には介護施設でも実証実験をする。効果が出れば来年度以降に現地法人を設立し、バンコクを拠点に東南アジアへの普及へ動くという。

 認知症を患って施設に入った父親がベッドから転落したり、施設職員から苦労話を聞いたりするうち「ITで何とかできないか」と発案したという吉武さん。「介護はさりげない見守りが大事。東南アジアに合った仕組みを提供したい」と意気込む。JICA九州の途上国専門嘱託、土屋良美さんは「民間が持つ先進技術を活用し、人海戦術に頼らない介護モデルがタイで作れれば画期的」と期待する。