通報や在宅確認 高齢者の見守りサービス広がる

2015年12月17日日経新聞

 離れて暮らしていたり、日中1人でいたりする親の身を心配する人は多いだろう。子どもに余計な心配をかけたくないと考える高齢者も増えている。そんなニーズを受け、様々な「高齢者の見守りサービス」が登場している。低価格で気軽に利用できることも多い。特徴を知り、希望に合ったプランを選ぼう。

 「自分1人でも安心して外出できるようになった」。埼玉県に住む80代の男性Aさんは同居する息子と相談して、緊急時に簡単に警備会社に通報できるサービスに加入した。日中仕事のある息子とは互いに連絡をとりにくく、Aさんはこれまで単独での外出は控えていた。サービス加入後は気兼ねなく外出できるようになり喜んでいる。

 Aさん親子が利用するのはセコムの「マイドクタープラス」。小型の専用端末を携帯し、いざというとき救急用ストラップを引けばセコムに通報が行き、通話もできる。状況によってはスタッフが現場に駆けつける。このサービスは、家の防犯警備サービスの加入者向けにオプションとして用意され、基本料金は月1944円だ(通話や現場急行などは別途課金)。

 同社は他に、単独で契約できるプランも用意する。「ココセコム」では、専用端末による緊急時の通報、担当者の現場急行といったサービスを受けられる。全地球測位システム(GPS)機能により、端末を携帯する本人の居場所を、インターネットを通じて家族が検索できるのが特徴。「親の帰りが遅い」「知らない場所に行ってしまったので駆けつけてほしい」といったケースに対応する。月額料金は972円からだ。

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 離れて暮らす親の様子を定期的にチェックしたいという人を対象にしたサービスも多い。

 東京ガスが提供する「みまも~る」は、ガスの利用状況から高齢者の日々の様子をうかがうというサービスだ。自宅に通信装置などを設置し、1時間ごとのガスの利用量データを集めて毎日2回まで、家族にメールで知らせるといった仕組みだ。

 食事の支度や入浴などにはガスを使うため、その利用量に大きな変化があれば、異変を知る手掛かりになる。料金は加入時に5400円、月々1015円かかる。

 象印マホービンが2001年から提供する「みまもりほっとライン」は、専用の電気ポットが見守り役となる。ポットには無線通信機が付いており、電源を入れたり給湯したりするたびに信号を発信する。集めたデータを毎日2回、メールで家族に届ける。

 ポットの利用が急に止まるなど、異変のサインを知るのに役立つ。ポットはレンタル扱いで、契約料5400円と月額利用料3240円がかかる。東京ガスのサービスと同様、緊急時に駆けつけるといったサービスはないが、知らせをもらうだけでも安心感につながりそうだ。
 日本郵便は13年から「郵便局のみまもりサービス」を開始。郵便局員が月1回以上、高齢者の自宅に赴き、話し相手となるなどして様子をみる。結果は定型の報告書で受け取ることもできる。

 取り扱う郵便局は一部地域に限られるが、「今後は都市部も視野に入れてエリア拡大を目指している」(日本郵便)。月額料金は訪問月1回30分のコースが2138円、同60分のコースが2678円だ。

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 NTTドコモは、月額利用料486円の生活支援サービス「家のあんしんパートナー」の対象として今夏、高齢者の見守りにも役立つサービスを追加した(追加料金はなし)。

 ひとつは在宅確認。離れて暮らす親と連絡がとれず心配なときなどに、オペレーターに電話して依頼すると、スタッフが対象者の自宅を訪問。外部からインターホンを鳴らしたり部屋の明かりを見たりして在宅かどうかを判断し、依頼者に電話で報告する。

 もうひとつは、タブレットやスマートフォン(スマホ)の内蔵カメラを利用した自宅内の異変検知。利用者は自分の端末に専用アプリをインストールし、見守りたい人の動きを捉えやすい場所に置いておく。例えばその人が急病で倒れたり徘徊(はいかい)で外出したりしてカメラが一定時間、何の動きも検知しない場合、メールで知らせてくれる。

 反対に何らかの動きを捉えた際に知らせるよう設定しておくことも可能だ。「家のあんしんパートナー」はドコモ携帯の契約者に限らず利用できる。

 各社のサービスは内容、料金体系とも多岐にわたるため、高齢者の健康状態に応じてよく比較したい。工事代や端末代など初期費用がかかるかどうかも要チェックだ。見守りは、サービスの利用だけではなく、家族によるケアが大前提であることは再確認しておこう。