超高齢社会を「見守る」、工事不要のモニタリング・アプリケーション
2015年11月21日財経新聞
日本が今、抱えている大きな問題といえば「少子高齢化」。世界保健機構(WHO)や国連の定義によると、人口構成において老年人口(65歳以上の人口)が7%以上で「高齢化社会」、14%以上になると「高齢社会」、21%以上となると「超高齢社会」という。日本は、1970年に7%を超えて「高齢化社会」となったのを皮切りに、07年には21%を突破、14年には25.9%で世界一となった。それでも日本の高齢化は加速し続けており、国立社会保障・人口問題研究所の予測によると20年に高齢化率は29.1%、40年には36.1%に達する見込みだ。
介護の問題や年金受給、医療不足などの問題もさることながら、一人暮らしの老人が増えることによって、日々の安全・安否の確認、高齢者を狙った犯罪の防止や抑止についての取り組みが、今よりもますます重要になってくるだろう。身近な対策としては、地域ネットワークの強化や巡回訪問サービスなどを受けることが挙げられるが、昨今、インターンネットの発展やスマートフォンの普及を背景ににわかに注目が高まっているのが「見守りアプリケーション」だ。
見守りアプリケーションとは、温湿度センサや人感センサ、開閉センサなどの情報をモニタリングして、遠隔地からでも見守りたい対象の家や部屋、人の情報を知ることのできるシステムだ。高齢者のみならず、子どもの見守りや災害時の要救護者確認等、様々な用途への活用が始まっている。
2013年には、株式会社NTTドコモ<9437>が公立大学法人岩手県立大学と共同で、岩手県岩手郡滝沢村社会福祉協議会の協力を得て、スマートフォンを活用した高齢者見守り活動の実証実験を開始するなど、官民協働での活用が模索されているが、先般、電池不要かつ配線不要の無線通信規格・EnOceanに対応したセンサを標準搭載したシステム開発キットが発売されたことで、一般家庭への普及が加速しそうだ。
「CS-AIOT-MIMAMORI-KIT」はコアスタッフ株式会社が販売する、見守りIoTシステム開発キットだが、これに電子部品大手のローム株式会社<6963>が、普及に努めている話題の無線通信規格・EnOceanセンサを搭載する。EnOcean通信規格に準拠したセンサ情報を、IoT向けゲートウェイ「Armadillo-IoT」を介してモニタリングできる。無線LANや有線LAN、3G回線を通じてインターネット接続を行い、クラウドサーバーを経由したモニタリング情報を、リアルタイムに3D表示で見たり、ExcelやCSV形式などの表データファイルとしてダウンロードする事も可能だ。なかでも、最大の利点は、EnOceanは配線工事も不要なため、導入が容易なことだ。最先端の「見守り」技術が、いつものお茶の間に、リフォーム工事無しで導入できるから、高齢者にも抵抗感は少ないだろう。
一昔前は「味噌汁の冷めない距離」などと言われたものだが、最近では、仕事や学校の事情なども複雑で、親世帯と子世帯が近所に住むのは難しくなっている。せめて「見守りアプリケーション」で日々のコミュニケーションをとりたいものだ。